プルルルルル、プルルルルル
部屋中に鳴り響くモーニングコールで俺と中尾は目を覚ました。
中尾「………ねむーい。」
吉本「う~ん………そうだなぁ……もう少し休みたいから、延長してく?」
俺が眠い頭でそう言うと、中尾は、ガバッと勢いよくベッドから起き上がった。
中尾「ぜっっっったい、いやっっっ!」
中尾はそう言いながら、ベッドから出るとソファーに畳んで置いた服を取り、着替え出す。
黒色基調のチェック柄下着を手早く着けて、クリーム色のノースリーブベストの上から黒いサロペットを着るまで、ものの数秒の間で着替え終わる。
中尾「はいっっ!出るよっ!」
吉本「はやすぎっ!」
中尾「当たり前じゃんっ!延長なんかしたらよしの思うツボじゃん!」
吉本「ひどいなぁ。そんな嫌がらなくてもいいじゃん。」
中尾「いや、昨日一晩で、よしの性的嗜好には付き合いきれないことが分かったから。」
吉本「いや、いつもそうじゃないし。」
俺はトランクスとジーパンを履きながらそう答えた。
中尾「へぇぇ。じゃあ、奥さんに顔にかけたり、一人でさせてみたりしてないんだ?」
吉本「いや、あるけどさ(笑)」
中尾「奥さん、よく嫌がらないね?」
吉本「ん?嫁さん、案外セックスは俺に従順だったから。でも、子供も大きくなってきて全然しなくなっちゃったけど。」
中尾「だからって、それを私に求めるな。」
吉本「いや、でも中尾やってくれたじゃん?」
中尾「いや、仕方なくだから。だから、もうよしとはしない。」
吉本「寂しいなぁ。」
中尾「だから、奥さんと仲直りして、奥さんにやってもらいなさいよ!私はよしのセフレにはならないから。」
吉本「そっかぁ。残念。」
中尾「今まで断り続けてきたけど、今日させてあげただけでも、大譲歩じゃん。」
吉本「た、確かに(笑)ありがとうございました。」
そう言って俺はTシャツを着ると、財布をジーパンのポケットにしまい、部屋の鍵を持って立ち上がった。
9時30分にホテルを出て、二人で駅に向かって歩いた。
吉本「中尾、実家帰るの?」
中尾「うん。」
吉本「ぐっちゃんには会わないで大丈夫?」
中尾「今は無理。」
吉本「そっか。あれ?でも、昨日軽く聞いたけど、中尾の実家って、確か引っ越したんだっけ?」
中尾「うん、引っ越したよ。」
吉本「どこに?」
中尾「軽井沢。」
吉本「え?そっから都内遠くない?」
中尾「遠いよ(笑)今は新幹線通勤してる。」
吉本「交通費出るの?(笑)」
中尾「今は貰えてる。その辺り、事務所理解あるから。長くは無理だろうけどね。」
吉本「そうなんだぁ。それじゃ、こっからだと終電早いよね。」
中尾「ホントは気付いてたけど、まぁ、久々に友達と飲むんだからいいかな、と思ったのが失敗の始まりだわ。」
吉本「そんなこと言わないでよー。実は俺はギリギリ走れば間に合っただろうけどさ(笑)自宅帰っても誰もいないし。」
中尾「確か、鎌倉だったよね。よし。」
吉本「うん。お互い地元から大分離れてるな(笑)」
中尾「まぁ、ねぇ。でも、私達には、やっぱり、ここは地元だよ。」
吉本「確かに(笑)」
そう話しているうちに駅に到着する。
改札を潜ろうとしたところで、中尾はチャージ不足で改札の扉が閉まってしまう。
中尾「あ、ごめん。ちょっとチャージしてくる。」
吉本「分かった。ちょっと腹痛いから、トイレ行ってる。」
中尾「なにそれ(笑)風邪ひいたんじゃね?先ホーム降りてるよ。」
吉本「急がせるからじゃんかー。じゃあ、都内寄りで。」
中尾は切符売り場に向かって歩いていったので、俺はトイレに向かったが、トイレの大が並んでいたので出るのに時間がかかってしまった。
急いでホームに降りたが、中尾の姿は見当たらなかった。
中尾の携帯を鳴らすと、10秒くらいして中尾が電話に出た。
中尾「今降りるー。」
吉本「あ、まだホーム降りてなかったの。都内寄りだよー。」
中尾「分かったー。」
そう言って電話を切ると、改札口から階段を中尾が階段をかけ降りてきた。
吉本「まだ電車来ないから、大丈夫だよ(笑)」
中尾は少しだけ息を切らせていた。
中尾「いや………チャージしてたら、雪に会っちゃって……」
吉本「え。やまさん?まだいるかなぁ。」
俺が階段の報告へ向かう素振りをすると中尾にすぐにシャツを捕まれた。
中尾「いや!行かないでよ。」
吉本「冗談です。」
中尾「よしと一緒にいたなんて言える訳ないじゃん。雪、ヒロのお店で働いてるのに。危なかったぁ。よしがトイレ行っててくれて良かった。」
吉本「タイミングのいい俺のお腹に感謝しないとね(笑)」
中尾「確かに(笑)」
吉本「で、山さんにはなんて?」
中尾「ま、色々。女の会話。でも、よしから電話来たから、途中で切り上げてきた。」
吉本「そっか。俺も山さんに会いたかったなぁ。」
中尾「それは自分で雪に電話しな(笑)」
吉本「でも、二人じゃ絶対会ってくれないし(笑)」
中尾「当たり前じゃん。雪はよしがどんな男か知ってるんだし。」
吉本「ひっど(笑)傷つくー。」
中尾「でも、友達続けてくれてるんだからねー。」
吉本「ま、まぁ。いやいや、おかしくね?」
中尾「なにがー?(笑)」
そうこうやり取りをしていると、都内へ向かう電車がホームへと滑り込んできた。
俺達二人は電車に乗り、帰宅路へとついたのであった。
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