小坂「はぁぁ。ホント、アホみたいに飲み過ぎたなぁ。」
小坂さんは、髪を少しだけ濡らし、寝癖を頑張って手で直しながら洗面所から出てきた。
山口「カラオケで、ワイン頼んだあたりかな?」
小坂「あ、その辺りまでは覚えてる。」
山口「小坂さんがボトル2本目頼んだ時、飲むペースにびっくりした(笑)」
小坂「私2本頼んだの!?う~ん……白ワインだから飲みやすかったんだよねぇ。あ!カラオケのお金!」
山口「ん?貰ったよ?」
本当は、貰っていないが、私は昨晩の罪悪感からとっさに嘘をついた。
小坂「うそ!?」
小坂さんは、バッグの中から財布を取り出し中身を確認した。
小坂「あー。嘘ついたでしょ。」
山口「ん?まぁ、気にしないでよ。」
小坂「ダメだよ。こうやって迷惑かけてるんだから。友達なんだから、逆に申し訳ないし。」
そう言いながら、小坂さんは、諭吉を1枚取り出して、私に渡してきた。
山口「いや、ホントにいらないから。」
小坂「ダメだって。これが仕事の上司部下とかの関係ならプライド傷付けないために出してもらうこともあるけど、山口君は友達なんだからさ。」
そう言いながら小坂さんは、お金を机の上にそっと置いた。
やっぱり、きっちりしていて、真面目なところは変わらない。
小坂「それより、昨日私変なことしてないよね?」
山口「え………」
私は瞬時に頭が真っ白になり、何と答えるべきか答えに詰まった。
小坂「ほら…。飲み過ぎて、ゲロ吐いたとか。」
山口「あ………あぁ!いやいや、大丈夫(笑)」
続けて出てきた彼女の言葉に私は拍子抜けしてしまった。
小坂「ホント?なら良かったー。いい年して、流石にね。そこは我慢出来たか。」
山口「え?そんなになるまで飲んだことあるの?」
小坂「あるよー。大学生の頃、友達と一晩中飲んだりした時、翌日家で吐いちゃった(笑)もう、その日は家から出なかったなぁ。」
山口「そんなになる山さん見てみたいなぁ(笑)」
小坂「無理無理(笑)昨日のが限界。じゃあ、お昼過ぎには主人と子供達帰ってくるから、もう帰るね。」
山口「うん。分かった。」
小坂さんは玄関でヒールサンダルを履いて、扉を開けた。
私も後に続こうとすると、小坂さんはそれを制した。
小坂「山口君、今日仕事行くんだから、ここでいいよ。」
山口「いや、エントランスくらいまでだよ(笑)」
小坂「それも大丈夫。仕事に備えて(笑)」
山口「じゃあ、そこまで言うなら(笑)」
小坂「うん。じゃあ、ご迷惑おかけしました。」
小坂さんは、そう言いながら頭を下げた。
山口「全然大丈夫。気をつけてね。」
小坂「ありがとう。」
そう言うと、小坂さんは玄関ドアを閉じた。
彼女のヒールサンダルの音が遠ざかっていくのを聞きながら、私はしばらくその場に立ち尽くす。
昨晩の出来事は、彼女の中の記憶には本当にないんだろうか?
そんなことを考えていたら、私は、あの時に記憶した景色が頭の中にフラッシュバックし、それに呼応するかの如く、すぐに下半身は健全な男の反応を示していた。
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