楽しい時間はあっという間に過ぎてしまい、気付くと時間は9時を回っていた。
お互いに前回くらいの量は飲んでいて、自分の体内を酒が循環しているのが分かる。
会計を済ませ店を出る。
小坂「あー、飲んだねぇ。」
山口「相変わらず飲むねぇ。小坂さん。」
小坂「んー。でも、まだ私は大丈夫だけどねぇ。」
私はこのまま解散と思っていたら、小坂さんは意外なことを言った。
小坂「山口君は明日は何時にお店行くの?」
山口「んー。お昼過ぎかな。翌日の発注作業3時までだから、それまでに行ければ。」
小坂「そっか。もし時間大丈夫なら二次会がてら、久々にカラオケとか行かない?」
山口「え?帰らないで大丈夫なの?」
小坂「うん(笑)今日から主人は子供と一緒に主人の実家行ってるから。」
山口「えぇ!?ごめん!何か。」
小坂「あ、気にしないで。今日山口君と飲むこと主人分かってるから(笑)」
山口「あ、そうなの?旦那さん怒ってないの?」
小坂「全然?怒ってたら、来ないよー(笑)」
山口「あ、そうなんだ。」
小坂さんの結婚式に私も参列しており、旦那さんは全く知らない相手ではない。
だから、旦那さんも安心して送り出したのだろう、と私は自己解釈することにした。
小坂さんとカラオケに行くのも、高校時代の楽しかった記憶が思い出せそうだったので、もちろん行くことにした。
駅前のカラオケボックスに入ると小坂さんは楽しそうにはしゃいでいる。
小坂「あー。ホント、友達と来るのは私も久々だなぁ。」
山口「んー。確かに(笑)あの頃はしょっちゅう行ってたからね。」
小坂「そうそう(笑)ママ友とか、仕事先の人とは行ったりしてたけど、学生時代の友達と行くのは、大学卒業して初めてかも。」
山口「あー、やっぱり、そうなっちゃうよねぇ。」
小坂「あ、飲み物頼もうか?」
山口「あ、そうだね。」
小坂「そういえば、高校時代は少しでも安くすませるために、フリードリンク付けないで行ったりしてた日もあったよね。」
山口「あ、それよしだよね?(笑)」
小坂「そうそう(笑)よく覚えてるねー。あの時、よしがお金50円くらいしか持ってなくて、私貸したんだよね(笑)でも、私もそんな持ち合わせなかったから、皆ウーロン茶一杯で歌いまくって。翌日、皆喉かれてて(笑)」
山口「あれは、マジできつかったね(笑)」
小坂「今じゃ出来ない(笑)」
他愛ない会話をしながら、飲み物を選ぶ。
小坂さんは、フルーツ系のカクテルを注文し、私はハイボールを注文した。
二人で高校時代によく歌った曲を懐かしむように入れていく。
一時間くらい歌っては雑談し、途中からはワインボトルを注文して、二人で飲んだが、小坂さんは、さっきよりも飲むペースが一段と早くなっていった。
私はワインがあまり得意ではないので、合間合間にウーロン茶を飲んだりしていた。
二時間のコールを知らせる電話が鳴るころには、流石の小坂さんも、大分酔いが回ってきていた。
途中で部屋が暑くなり、カーディガンを脱いでいた小坂さんのノースリーブワンピースの肩口からは、ピンク色のブラジャーのストラップが見えていたが、彼女は気にする様子はない。
山口「小坂さん、時間だって、どうする?」
小坂「え~……そうだねぇ……ちょっと大分飲んじゃった?」
言葉尻が聞き取りずらく、呂律が少しばかり怪しい様子があるので、私は小坂さんにカーディガンを着せて部屋を出た。
少し足元が怪しいので、二の腕の辺りを支えながら、カウンターまで行き、私は会計をした。
会計中に、小坂さんはベンチに座って壁に寄りかかるようにして、うつむいていた。
山口「小坂さん、会計終わったよ?」
小坂「あ………いくら?」
山口「大丈夫、終わらせたから(笑)大丈夫?」
小坂「大丈夫。だよ。」
ゆっくりと立ち上がったが、小坂さんはバランスを崩し転倒しそうになったので、私は慌てて彼女を支えた。
小坂さんの体を支えた瞬間、彼女の胸の感触が私の全身に伝わる。
二の腕を支えれば、何とか歩行可能だったのでエレベーターに乗って私達は外に出た。
外に出た時には、より彼女の酔いは強くなっていた。
山口「小坂さん、大丈夫?」
彼女は私に支えられながら、何とか歩き
小坂「大丈夫。」
と聞こえるか聞こえないかくらいの声で返答した。
山口「大丈夫?家、無事に帰れる?」
小坂「………うん。」
山口「タクシーに家の場所説明出来る?」
小坂「………うん。」
私は駅前のタクシー乗り場でタクシーの運転手さんに彼女を送れるか聞いたところ、住所が分かれば送るという返答が来た。
私は彼女に住所をタクシー運転手に伝わるように言うが、彼女は返事はするが、住所は説明出来なかった。
運転手「お客さん、これじゃ流石に送れないよ。」
タクシーの運転手に乗車を断られてしまい、私は途方に暮れた。
彼女の住所はお店に行けば分かるが、詳しい場所は実際聞いたことがない。
山口「参ったな。小坂さん、家帰れる?」
小坂「………うん。」
山口「このままじゃ帰れないよ?」
小坂「………うん。」
ダメだ。
そこで私は途中で頭をよぎった考えを口にした。
山口「もしあれなら、俺の家近いから、俺の家で休んでく?」
小坂「………うん。」
家に帰っても旦那さんはいない。
なら、今日はうちで休んでいっても、大丈夫だろう。
私は自分自身に、緊急措置だ、と言って、彼女を自分のマンションへと連れていった。
※元投稿はこちら >>