小坂「ありがとう。助かりました。」
小坂さんは、私が起こした自分の自転車を受けとると、そうお礼を言った。
山口「いえいえ、それより大丈夫?」
小坂「ん?」
山口「いや、大分飲んでるけど、自転車乗れる?(笑)」
小坂「あぁ、駅の反対口に主人迎え来てくれるみたい。」
山口「あ、そっか。一緒についてく?」
小坂「道くらい分かるよ(笑)」
山口「いや、変なのに絡まれたら。」
小坂「まだまだ人通りあるから、こんなおばさんに絡むやつなんていないよ(笑)」
山口「そうは言っても。」
小坂「それに、三人の男、いや、四人の男育ててきて、私、昔に比べたら力強くなったんだよ(笑)」
小坂さんは、そう言いながら二の腕の辺りを見せつけるようにして私に近付けてきた。
確かに、昔の彼女は今よりも、もっと華奢な感じだった。
一度ふざけながら皆で学校のトレーニングルームの重りを上げるマシンで全員測定したら、彼女は15キロの重さで既に持ち上げるのが出来なかった記憶が甦ってきた。
今でも、十分華奢な体だと思うが、確かによく見ると、二の腕の辺りは少し筋肉がついている感じがした。
小坂「ちょっと見すぎ(笑)」
そう言いながら小坂さんは二の腕を遠ざけた。
山口「確かに、高校時代から比べたらちょっとはたくましくなってるかも(笑)」
小坂「でしょ?主婦やると自然と力つくんだよ。毎日が戦いだから。」
山口「何か、山さんの主婦姿がイマイチ想像つかないんだけど(笑)」
小坂「いや、一日一回は誰かしら怒鳴りつけてるし(笑)」
山口「へぇ。意外だね。」
小坂「だから、主婦は強くなるのよ(笑)」
山口「そっかぁ。」
小坂「あ、多分主人もう着いてるだろうから、もう行くね。今日はありがとう。久々に友達と飲んで楽しかった。」
山口「こちらこそ。また、飲もうよ。」
小坂「そうだね。じゃあ、また来週。」
山口「うん、気をつけて。」
小坂「ありがとう。」
そう言うと、小坂さんは自転車を押しながら駅の反対口へと続く地下道へと消えていった。
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