《永川編》
私は自宅に着くなり、すぐに洗面所に向かった。
私の下着が入っている棚から新しい下着を出すと、ショートパンツを脱ぎ捨てて、新しいショーツを履く。
トートバッグの中から吉本君の家に行く時に履いていたショーツとショートパンツをセットにして洗濯機の中に投げ入れ、着ていたTシャツを脱ぐとブラジャーを外した。
裸になった上半身に制汗剤のスプレーを撒く。
鏡に写った自分の姿を見て、我ながらおっさんみたいだな、と思ってしまい、笑いを堪えられなくなってしまった。
永川「あははははは。」
洗面所に響く私の笑い声。
永川「こんな身体でも、まだ女に見られただけ良かった(笑)」
元々大きくなかった胸が、授乳期にCくらいまでは大きくなったものの、授乳を終えてからまた一気にしぼんでしまい、今では申し訳ない程度の膨らみに少し黒ずんでいる乳首が付いている私の身体。
こんな夫にも飽きられた残念なおばさんの身体でも、夫以外の男性に求められることがあるんだ、と思うと今までモヤモヤしていた自分の心の内が少しだけ晴れたような気がした。
外したブラジャーを洗濯機の中に入れてから、手早く新しいブラジャーを着け、脱いだTシャツを再び着た後に、洗濯機の上に置きっぱなしにしていた出掛ける直前まで履いていたワイドパンツを履くと、いつもの主婦である私の出来上がりだった。
私はトートバッグを持ってリビングに出ると、丁度次男が帰ってきたところだった。
次男「ただいまー。」
永川「お帰り。お母さん洗濯物しまってきちゃうから、ランドセル置いて、手洗ってね。あ、学校の手紙は机に出しといてー。」
私はいつもの母親の姿に戻り、2階へと登る。
制服類が入っているトートバッグを寝室のウォークインクローゼットの奥底にしまうと、私はベランダに行き洗濯物を取り込み始めた。
永川『さっきまでは、あんなことしてる母親だったのに……。何か申し訳ないな。』
あんな行為をした後に改めて子供の顔を見ると、私は内心、夫、というよりも、子供に対して罪悪感を抱いてしまった。
洗濯物を取り込み終わり、リビングに降りる途中に、長男も帰ってきた。
長男「ただいまー。いってきまーす!!」
ランドセルを玄関に投げ捨て、すぐに友達のところに出掛けていく長男。
永川「あっ!こらっ!!」
私が誰と遊ぶのかを聞く間もなく長男は遊びに出てしまった。
永川「まったく。父親に似て何度言ったって直りゃしないんだから。」
私は愚痴を言いながらも、長男の投げ捨てたランドセルを拾いリビングに入った。
永川「宿題出たー?」
私はエプロンを着けながら、リビングのソファに座り、タブレット端末で動画を見始めている次男に声をかける。
次男「ないー。」
永川「ホントにー?先週そんなこと言って、実は宿題出てたけど、今日は大丈夫だよね?」
次男「うん。」
タブレット端末から目を離さずに答える次男を横目に見ながら、私は夕飯の下ごしらえを始めた。
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