小坂「で、最近の中尾の様子はどう?」
アイスコーヒーにガムシロップを入れながら、山さんは今日会うことになった核心部分の質問をしてきた。
前回同様に山さんは俺の職場近くまで来てくれたので、二人で、駅近くのイタリア料理の店に来ていた。
吉本「んー、そう言われても頻繁に会ってる訳じゃないしなぁ。お互い社会人で責任ある立場にいるからね。」
小坂「え?じゃあ、あれから全然会ってないってこと?」
吉本「いや、そりゃあ、全然って訳じゃないけど。お互いの時間が合った時に、って感じかな。」
小坂「………ふ~ん。そっか。まぁ、確かに二人共、仕事忙しそうだしね。」
俺は山さんの俺に向けた視線が一瞬冷たく攻撃的になった瞬間を見逃さなかった。
高校で知り合った頃から、何度か見たことのある視線だった。
真剣な話し合いで、本音を語らなくてはいけない場面で、建前を話したり、誤魔化したりすると、山さんは、その発言者にこういった視線を送る。
特に、友人同士のトラブルで揉めて仲裁に入るため、山さんが、何がトラブルの原因なのかを友人達の話に真剣に耳を傾けている時、俺が茶化したりすると、よく怒られることがあった。
怒る直前には、決まってこの視線を向けられていたので、俺にはすぐに気付くことが出来た。
吉本「ん?なに?」
俺は努めて冷静に聞いた。
小坂「いや、何でもないよ。」
吉本「いやいや、絶対何か怒ってるでしょ?(笑)」
小坂「別に……怒ってる訳じゃないよ。ただ、何か隠してるなぁ、とは思ったけど。」
吉本「いや、隠すような話はないよ。」
小坂「だから、これ以上よしの話を聞いても無駄だな、と思って。」
吉本「ひどいなぁ。でも、まぁ、確かに一部嘘ついた。たまに、っていうのは嘘。ごめん(笑)」
小坂「真剣に中尾の様子が聞きたいんだから、真面目に答えてよ。」
吉本「う~ん。たまに、ではないけど。中尾とは極力時間作って会うようにはしてるよ。」
小坂「そう。よしの奥さんは大丈夫なの?」
吉本「うちは大丈夫だよ。別居中だし。最近は離婚もあり得るのかな、と思ってるくらいだよ。」
小坂「そうなの?」
吉本「子連れ再婚だから、子供の教育方針については極力関わらないようにしてるんだけどね。」
小坂「そうなんだ。まぁ、よしの家の問題だから何も私には言えないけど、そこに絶対中尾を巻き込まないでよね。」
吉本「あぁ……。そうだね。それは気を付けないとな。」
小坂「あんまり二人で会いすぎてても、ふとしたこで奥さんにばれて、そうなってからじゃ遅いんだからね。」
吉本「うん。分かった。気を付けるよ。」
俺は山さんのアドバイスに、中尾の性奴隷にすることばかりに気を取られ、リアルに生じるリスクに目を向けていない自分がいたことに気付いた。
確かに、今のまま進むには問題が多過ぎる。
小坂「じゃあ、あんまり多くは言わないけど無理はしすぎないようにね。」
そう言うと小坂さんは財布を取り出す。
吉本「あ、もう支払い終わってるよ。」
小坂「え?いやいや、悪いって。私が呼び出したんだから。」
吉本「大丈夫だよ(笑)山さんの身体で払ってもらえば(笑)」
小坂「そんな安くありません。」
そういって山さんは、財布から千円札を2枚取り出すと私の前に叩きつけるようにして置いたのだった。
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