小坂「明日は休みなよ。代わりに私出るから。」
帰り支度を整え、小坂さんは玄関で私にそう言った。
山口「いや……。俺行かないと発注滞るし。」
小坂「私がやっておくから。まずは1日頭冷やしな?」
山口「う~ん……じゃあ、明日だけ休むよ。」
小坂「うん、分かった。じゃあ、また。」
山口「ありがとう。」
小坂「気にしないで。」
小坂さんは、ゆっくりと扉を閉めて、帰宅路へ着いた。
翌日は、泥のように眠り続けた。
ここ最近、こうして丸一日1人での休みを取ったのは、いつ以来だろうか。
中尾の休みの日に合わせて休むことはあっても、中尾が仕事の時は必ず私も出勤していた。
何とか売上を伸ばそうとここ数ヵ月はガムシャラに走り続けていた。
しかし、眠り続けるのにも限界があり、家に引きこもっているのも気が滅入るので、お昼過ぎにはドライブに出掛けた。
店の前を通りがかる際、ドリンクを買いがてら、小坂さんにお礼を言おうと思い、店に立ち寄ることにした。
カウンターのパートさんには挨拶をして、バックヤードに入ると、小坂さんが制服を羽織り、パソコンに向かっていた。
小坂「あれ?休んでて良かったのに。」
山口「いや、家に居ても、何だか悪いことばかり考えちゃうから、ドライブしようと思って。」
小坂「あ、そうなの(笑)まぁ、それなら、そ前向きになろうとしてる証拠だから、いいだろう。」
山口「あざーす(笑)」
小坂「あ、ドライブがてらで立ち寄ったのに仕事の話で申し訳ないんだけどさ、朝の入荷商品の発注、これから私にやらせてみない?」
山口「ん?」
小坂「いや、3ヶ月やってみて、何となく流れが見えてきた感じするから。」
山口「あ、そうなの?でも、大丈夫?」
小坂「何が?」
山口「売上伸ばせる?(笑)」
小坂「それ言われたら自信ないけど、下げるつもりもないよ(笑)」
山口「じゃあ、お願いしようかな。」
小坂「ホント?じゃあ、頑張ります!」
山口「これで俺は小坂さんと一蓮托生だな(笑)」
小坂「夕方入荷は責任持てません(笑)」
山口「分かってるよ(笑)じゃあ、ドライブの続きに行ってくる。」
小坂「いってらっしゃい。気をつけてね。」
山口「ありがとう。」
店を後にする時、先程よりも肩の力が抜けて、何だか前向きになれるような感じがしてきていた。
高校の時も、小坂さんはそんな感じで誰とでも上手く話していた子だったな、ということを改めて思い出した。
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