私がスマホのスパイカメラを起動すると、永川さんが、トートバッグを肩からかけて、洗面所内をキョロキョロと見渡していたところだった。
私はすぐに、カメラの録画ボタンを押して、撮影を開始する。
やがて、洗面台の隣にあるドラム式洗濯機の上にトートバッグを置いた後、永川さんは、洗面台に向かって立つと、鏡を見ながら髪の毛を撫でるようにして、髪型をチェックする仕草を始めた。
スマホの画面に写っていたのは、まさに、無防備な永川さんそのものだった。
別段乱れている訳ではないが、永川さんは、しばらくの髪の毛を整えていた。
永川「よしっ!着替えよう!」
永川さんは大きく息を吐いた後に、小声で自分に言い聞かせるように呟くと、両腕をクロスさせてTシャツの裾を掴んだ。
掴んだTシャツの裾を、そのまま一気に上に引き上げると、永川さんは、Tシャツと同じ色の白色キャミソール姿になった。
Tシャツを脱いだ際に、一瞬だけキャミソールの下に白いブラジャーが見えたが、すぐにキャミソールによって隠されてしまった。
キャミソールは、上腹部くらいまでの長さであったため、へその辺りが晒された状態の永川さんがカメラに写る。
永川さんは、キャミソールを脱ぐことはせずに、洗濯機の上に置いてありブラウスを手にすると、そのままキャミソールの上からブラウスを羽織る。
山口『脱がないんだ。』
私は苦笑いしながらも、画面を眺め続けた。
永川さんは、ブラウスのボタンを閉めおえると、リボンを襟につけ、続けてスカートを手にして、ショートパンツを履いたままの状態で、スカートを履いた。
山口『いや、むしろ山さんよりガード堅くないか?』
私は画面を見ながら、そう内心で思ったものの、小坂さんの場合はシャワーを浴びる前提条件があったのだから、彼女が洗面所で全てを晒け出すのは必然だった。
スカートを履き終えた永川さんは、続けてスカートの下に履いたショートパンツを脱ぐと、紺色のハイソックスを履いていく。
私は、ここで一旦録画を停止した。
山口『まぁ、私服に着替え直す時に、またチャンスあるから、その時でいいか。』
しばらく、ソファーに座りながら、リビングで待っていると、永川さんがトートバッグを肩から下げて、中の様子をうかがうようにして、ゆっくりリビングへ入ってきた。
永川「お待たせしましたぁ。」
最後の方は消え入るような声をしている。
私は無言で彼女の全身を観察した。
永川「ちょっと、大分恥ずかしいんですけど、想像してたのと違ってたらごめん…」
山口「想像してたのと違う、って意味がよく分からないけど(笑)」
永川「いや、高校の頃に比べたら明らかに太いから……」
そう言いながら、永川さんは、太ももの下半分が出たスカートを押さえて、恥ずかしそうに言った。
山口「まぁ、そりゃ高校時代に比べたら、子供産んでるし、多少ふくよかにはなったけど(笑)」
永川「ほらー!やっぱり、豚じゃん!」
永川さんは、顔を両手で覆いながら、悲しそうに叫んだ。
山口「いやいや、ちょっと待ってよ(笑)豚なんて一言も言ってないから(笑)デブでもないよ。だって、今も、中尾のスカートが履けてるじゃん。」
永川「美起ちゃんは、身長あるから、そもそも違うよー。」
山口「いや、あのさ。美起の高校時代の体型を考えてみて?まだバリバリに部活やってたじゃん?」
永川「そうだけど……」
山口「それが入ったんだから、大丈夫。太ってはないよ。」
永川「そう……なのかなぁ…」
実際には嘘をついていた。
中尾のスカートと言ったものの、中尾も高校時代の制服を着ようとしたが、スカートが入らなかったので、私がネットオークションで少しウエストの大きいサイズの物を買ったスカートだった。
そして、中尾はネットオークションで買ったのを嫌がりそれを着ないまま、クローゼットの中にしまってあり、それを永川さんに渡していたので入るのは当然だった。
永川さんは昔から自身の体型が幼いのに対して、小坂さんや中尾がスレンダーな体型だったので、自分のことを太っていると勘違いしがちだった。
実際には、小柄で女性らしい体型で、その雰囲気からにじみ出る愛くるしい感じが、男子に人気の秘密だったにもかかわらず、本人はまるでそのことに気付いていなかった。
とりあえず、永川さんのコンプレックスを解消したところで、私は財布をポケットから出し、札入れから一万円を取り出して永川さんに差し出した。
山口「はい。今日の分です。」
永川「え?さっき、一万円貰ったよ?」
山口「いや、さっきのはクリーニング代と交通費で、これは、これからすることのお金です。」
永川「あ、そっか!そう、ですよねっ!これからのねっ!これからの。そりゃ、制服着るだけじゃないですよね。」
再び永川さんは、緊張の空気をまとってしまった。
しかし、制服を着るのにこぎ着けられたので、後はこのまま勢いで突っ走るだけだ。
山口「うん。これからのだよ。」
永川「はい………はい。あ、お金どうしよ。」
永川さんは、緊張した様子で辺りをせわしなく見渡している。
私は一万円を食卓の上に置いた。
山口「終わったら忘れないようにね。」
永川「あ…………はい。」
その様子を見て、永川さんは周囲を見渡すのをやめて、私の顔を恐る恐る見る。
山口「寝室行こうか。」
永川「はい。」
永川さんは、素直に返事をして、私の後について、寝室に入ってきたのであった。
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