小坂「そっか。そんなに悩んでたなら、1人にならないでいいのに…」
小坂さんは、中尾の置き手紙に目を通すと、そう呟いた。
小坂「もしかしたら、実家かなぁ?」
山口「それも考えて、電話してみようか悩んでた。」
小坂「あ、ダメダメ。親には妊娠したこと話してないかもだし。ちょっと、私に時間貰える?何とか中尾探してみるから。」
山口「………分かった。でも……俺そんなにダメだったかなぁ……」
リビングの床に腰をついて私は頭を抱えた。
小坂「産んでほしかったんだよね?」
山口「うん。だから、今週も何とか店の売上を上げようと一生懸命やってたんだけどね……」
自然と涙が流れ、床に落ちた。
40を過ぎて、自分の不甲斐なさにうちひしがれるとは思わなかった。
確かに、仕事の成果は中々上がらなかった。
でも、自分なりに何とかしようともがいてきたつもりだった。
それでも、自分の力では小さな命一つ救うことが出来ない無力な自分に腹がたった。
そうしていると、突如、柔らかい感触が側頭部から伝ってきた。
小坂さんが私の頭を両腕で抱えていたのだ。
しっかり私の体に伝わる、小坂さんの柔らかい乳房の感覚
私は、その感覚に身を預けるようにして、涙を流した。
小坂「大丈夫。山口君は悪くない。これは誰も悪くない。山口君は一生懸命頑張っていたの私が見てたから。」
山口「……ありがとう。」
私は、両腕を小坂さんの背中に回して、彼女の胸の中に抱かれながら、久々に声を出して泣いた。
彼女は黙って、私が泣き止むのを待ってくれていた。
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