ピーンポーン
部屋のインターホンが鳴り響き、私は飛び上がるようにして、ベッドから体を起こした。
時計を見たら、午前8時だった。
私は小走りで玄関に行き、扉を開けると、小坂さんが立っていた。
小坂「大丈夫なの?」
心配そうな顔で、小坂さんが声をかけてきた。
山口「うん。痛み止め飲んでるから。」
小坂「そう。とりあえず、入るね。」
山口「あ、うん。」
私は小坂さんを部屋に招き入れた。
小坂「え?ちょっと………。掃除全然出来てないないじゃない。」
山口「あ、うん。最近、飯も店で買ったやつばっかりだし、帰っても片付けする気力がなくてさ。」
小坂「だから、あれ程無理しないで、って言ったじゃない。事故は何時だったの?」
山口「ん。2時過ぎだと思う。」
小坂「ねぇ。昨日は夜勤の人来たら上がるって言ってたじゃないの!私、本当に怒るよっ!」
山口「ごめん。」
小坂「本当に今回は命助かったから良かったけど、話聞いた感じじゃ、一歩間違えたら死んでたかもしれないじゃない!」
山口「うん。」
小坂「で、今日は何時に帰って来たの?」
山口「6時くらい。電話した時かな。」
小坂「はぁ。とりあえず、もう少し寝てて。私、部屋片付けしちゃうから。」
山口「あ、それは自分で…」
小坂「そんな手でやれる訳ないじゃない!ほら、邪魔だから、一旦、休んでて。店は昼過ぎに連れてってあげるから。」
山口「すいません。」
まるで母親に怒られているような気分だった。
ただ、小坂さんが怒るのも無理はない。
それくらいに彼女の忠告を無視した結果がこれなのだから、怒られても仕方ないことだ。
私は小坂さんの言うとおりに、しばらく寝室で休息を取ることにした。
やはり、相当疲労がたまっているのだろう。
私は、すぐに夢の中へと落ちていった。
ガンガンガンガン
小坂「起きろー。お昼だぞー。」
小坂さんが私の頭の上で鍋をガンガン叩きながら起こしてきた。
山口「随分古典的な起こし方(笑)」
私は、横になったまま小坂さんを見上げた。
小坂「ん?これ、子供達起こす時にたまにやるよ。昔から使われてるってことは、効果がある証拠だからね。」
山口「そうなのかもね。あ、いたたたっ」
体を起こそうとした瞬間、右手に激痛が走り、私は右手を抑えた。
小坂「痛み止め、切れちゃったんだろうね。お昼、作ってあるから、食べたら薬飲みなよ。」
山口「ありがとう。」
リビングに行くと、先程まで散らかっていた部屋が綺麗に片付いており、食卓には、カレーが置かれていた。
小坂「利き腕使えなくても、カレーならスプーンで食べやすいでしょ。」
山口「うん。ありがとう。」
小坂「じゃ、私、寝室掃除してきちゃうから。」
山口「うん。」
そう言うと、小坂さんは先程まで私が寝ていた寝室へと入っていった。
私は、食卓に置かれたカレーを口に運ぶ。
何だか久しぶりに人の手で作られたカレーを食べたその味は、とても懐かしい味がして、自然と口に運ぶスプーンが進んでいった。
山口「美味しいなぁ。」
私は、独り言を言いながら、あっという間にカレーを完食してしまった。
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