夏のキャンプが終わってから9月に入り、私は社会人になってから、1番働いているんじゃないか、というくらいに仕事中心の生活になっていた。
小坂「ねぇ、山口君、いい加減休みなよ。」
ある日、小坂さんが仕事をあがってから、そう声をかけてきた。
山口「ん?大丈夫だよ(笑)家に帰ったって、やることないし(笑)」
小坂「そういう問題じゃなくてさ。夜勤のシフトあがってから、お昼にまた出勤してきてとか、全然休めてないじゃん。」
山口「全然休めてるよー。」
小坂「………自分の顔、鏡で見たら。」
山口「毎日見てるよ?」
小坂「明らかに、やつれてきてるよ。」
山口「そう?」
小坂「最近、体重計ったりした?」
山口「してない。」
小坂「はぁ。男の人はあまり計らないか。とりあえず、今日は夜勤の人来たら絶対家に帰ってよね。」
山口「うん。分かった。でも、今月は第3四半期の最後の月だからね。頑張らないと。」
小坂「体壊したら元も子もないわよ。」
山口「そうだね。今日は夜勤も2名だから、ちゃんと帰るよ。」
小坂「分かった。気を付けて帰ってよ。」
山口「うん。ありがとー。」
私は、小坂さんが帰宅した後、8月中の店舗運営に関する報告書と第4四半期の展望に関する報告書を作成した。
山口「あれ?もう2時か。」
夜勤クルーが10時に出勤してきた時は、丁度報告書も佳境に入ってきていたので、そのまま時間を忘れて作業を続けてしまっていたら、小坂さんとの約束の時間を大きくオーバーしてしまった。
山口「明日もあるし、今日はこれで帰るか。」
作成を終えた報告書を保存し帰り支度を整えた。
山口「じゃあ、私は上がります。お疲れ様でした。」
夜勤「お疲れ様でした!」
店の駐車場に停めていた車に乗り込みエンジンをかけ車を出発させる。
帰り道で明日の仕事の段取り等を考えながら走っていると、ふと、子供のことが頭をよぎった。
誰の子供か分からないが、その子供は口元に笑顔を浮かべていたが、目や鼻の部分は霞んでしまっており、一瞬、周囲が真っ白にぼやけた。
山口『あぁ。もしかして、君が中尾の中にいた俺と中尾の命なんだね。』
そんな走馬灯のような一瞬の時間から、ふと現実に引き戻される。
気付いた瞬間には、目の前に街路灯が迫っていた。
とっさにハンドルを右へ切る。
ドンッ!
車が衝突する鈍い音が身体の芯に響いてきた。
車は街路灯にぶつかり横転してしまい、エアバッグが開いた。
次に気付いた時にはストレッチャーに乗せられて救急科に乗せられるところだった。
山口「…………ん。」
救急隊員「大丈夫ですかー?」
山口「え?」
救急隊員「事故です。街路灯に突っ込んじゃったみたいですね。お名前と年齢言えますか?」
山口「山口広明……41歳です。」
救急隊員「どこか痛いところあります?」
山口「痛いところ………右手が痺れてます。」
救急隊員「右手ちょっとさわりますね。」
山口「あっ!いててててっっっ!」
救急隊員に右手を動かされた瞬間、右手に激痛がはしった。
救急隊員「41歳男性、意識レベル1、右手骨折疑い、他に外傷等はなし。」
救急隊員が私の体の状態について、無線で報告をしている。
救急隊員「じゃあ、山口さん、病院はとりあえず近くのT共同病院に搬送するんですけど、誰か親族は近くに住んでらっしゃいますか?」
山口「いないです。」
救急隊員「では、どこか連絡してほしいところは?」
山口「とりあえず、コンビニのT桜ヶ丘町店に連絡お願いします。」
救急隊員「分かりました。あ、あと警察から確認なんですが、車は一旦レッカーで移動してほしいみたいですが、もし、レッカー業者分からなければ、自腹にはなってしまいますが、警察で手配していいか、とのことですが、どうします?」
山口「それでお願いします。」
救急隊員「分かりました。では、その様に伝えておきます。」
こうして、私は病院へと救急搬送されていったであった。
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