《山口編》
小坂「え?中尾が来たの?」
小坂さんが制服を羽織ながら言った。
山口「うん。俺が帰ってきたら、すぐにまた出ていっちゃったけど。」
小坂「そうなんだ……。」
日曜日にキャンプを終え、小坂さんの最初の出勤日である火曜日に、私は小坂さんに、キャンプから帰ってきたら中尾が家に来ていたことを伝えた。
山口「俺、どうしたらいい?って聞いても何も答えてくれなかったしなぁ……」
小坂「う~ん。それは、中々答えらずらい質問だと思うけど。」
山口「もうちょっと待って、みたいなこと言ってた。」
小坂「そっか……。」
小坂さんは、何かを知っているような感じがしたが、俺はあえてそれ以上は何も聞かなかった。
山口「まぁ、とりあえず、俺はカウンターつくよ。小坂さんは、午前中に、発注お願いします。」
小坂「はい。分かりました。」
私は、バックヤードに小坂さんを残し、早朝クルーと交代した。
レジカウンターで接客をしながらも、私は今後のことについて考える。
山口『でも、中尾が来てくれて良かった。』
今日、小坂さんが出勤してきて普通な対応が出来たのも、中尾が日曜日に家に来たからであって、もし、中尾が来ていなかったなら、最初にどう声をかけたらいいかも、分からなかったかもしれない。
次はいつ小坂さんとセックスを出来るチャンスがあるだろうか?
中尾が家に来ていなければ、私はきっとそんなことばかり考えていたかもしれない。
今の正直な胸の内は、私も小坂さんと、このままの関係続くなら、中尾が戻ってこなくてもいいかもしれない、と思ってる部分は否定出来ない。
だが、小坂さんは、既婚者であり、三人の子供の母親であり、この関係がいつまでも続くとは思えない。
だからこそ、矛盾してしまうようだが、冷静な現実に戻してくれる、中尾の存在は大きなものであることに違いなかった。
夕方になり、小坂さんは仕事を交代して、バックヤードで帰り支度を整えている小坂さんに私は声をかける。
山口「あ、そういえばさ。」
小坂「なに?」
私は少し声のトーンを落としながら、もう一つ気になっていることを聞くことにした。
山口「永川さんの件って、どうなってる?」
小坂「あ、永川の件ならまだ何もしてないよ?日曜帰った後に考えたんだけど、なんていうか、もうバレてるだろうから、急いでどうこうする話じゃないかな、って思って。」
山口「あ、そっか。分かった。何か動きあったら教えてね。」
小坂「女同士の話だからなぁ(笑)でも、言えることがあったら、ちゃんと報告します。」
山口「お願いします(笑)」
小坂「じゃあ、私あがるね。」
山口「お疲れ様。」
小坂「お疲れ様でした。」
そう言いながら、小坂さんはバックヤードを後にした。
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