『康太~、野球遅れるわよ~』
日曜日の朝。小3の息子を野球に連れていく。今日から監督が変わると聞いていたけど、そんな日に練習に遅れるわけにはいかないので、仕方なく息子と一緒にグラウンドに向かった。
「こんにちは、春田野球チームの皆さん。秋川太一といいます。今日から短い間だけ臨時の監督です。よろしくお願いします。」
ママ達の目線は、目の前の格好良い男性に注がれる。聞けば大学3年生。体格も良くて爽やか。おまけに運動もできるイケメンに、私も見とれてしまう。そして、私と視線があうと、こちらに笑顔で返してくる。ドキッと心を鷲掴みされたような、キュンキュンする感覚に陥っちゃう。
(だめよ、ダメダメ。私は人妻なの。しっかりして。)
終始周りのママ友との会話を楽しみ、練習が終わりを迎えた。泥だらけの康太を見て、今日もお洗濯大変だ…と思ってると、息子から紙を渡される。
監督が渡してくれって。そう息子に渡された紙には、ペンで一言
「K大テニスサークル、メス犬の赤里」
立ち止まると全身から汗が吹き出る。脳内に甦る過去の情事に、一瞬息ができなくなる。母ちゃん!という声で我に戻ると、笑顔で息子の汗だくの頭を撫でる。帰ろっかといい笑顔になるも、背筋はおぞましい過去に凍ってしまう。
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