僕と計画を練った人達とは、少し温度差があるようだった。子供達のためにも、出来るだけ早く籍を入れてしまいたい彼女達。
それに比べ、いつも問題から逃げ、後回しにしてきた僕とでは感覚が違います。焦らなくても、時間はいくらでもあるなのです。
そして、彼女達が望むのは父親。僕が望むのは、数年振りとなる恋愛したいと思う心。噛み合うはずがありません。
『ひろみちゃん、どうするの~?向こうは慌ててるんよ~?』、更に急かすような母の言葉にうっとうしさを感じるのです。
その日も、ひろみさんが子供達とやって来ました。母親の彼女は、まだ幼い子供に目を配りながら、遊ばせてやっています。
そんな家族の姿を見て、僕は自身も考えの甘さを知るのです。どれだけ、安易に考えていたのかを。
僕が思い浮かべていたのは、13歳も年上となるひろみさんとの恋愛でした。彼女と身体を重ねるシーンばかりを考えていたのです。
しかし、現実は違います。そこには2人の子供がいて、見守る彼女はお母さんそのものでした。
僕が恋愛しようとしているのは年上の女性ではなく、40歳を過ぎたお母さんなのです。
見えてくる現実。不安になる未来。考えの甘さを感じ、不安になった僕は現実逃避。
そんな面倒なひろみさんとの縁談など、いつものように投げ出そうと考えてしまうのでした。
『ヨシ兄さん?今日、少し時間あります?』
子供達が走り回る中、ひろみさんが僕に聞いて来ます。何もない僕は、『いいですよ。』と答えました。
すると、『なら、お義母さん、ちょっとお願いします。』と母に告げ、立ち上がろうとするのです。
それは、今からどこかに出掛けるように見え、僕も上着を羽織ながら、車のキーを取ります。
不安そうな子供達の顔に手を振りながら、ひろみさんは僕と車の方へと向かうのでした。
家の前の駐車場。僕の車と彼女の車が並んで停まっています。
『どっちで行きます?』と聞くと、『なら
ヨシ兄さんので。』とひろみさんが選びました。
どこかに行くかも聞かされないまま、僕はエンジンを掛けます。右なのか、左なのか、僕はひろみさんに行き先を聞きます。
彼女が告げたのは、左。賑わう町のある方角です。すぐの信号につかまり、車は停車をしました。その時、
『あのねぇ~、ヨシ兄さぁ~ん。』
と声を掛けられます。しかし、それは普段僕には言って来ないテンション。こんなに軽くは話し掛けては来ないのです。
それが妙に気になってしまい、警戒をさせてしまいます。そして、『ん~と~、』と挟んだ彼女は、真実を伝えて来ました。
『私と、ホテルとかどうですか?いや?』
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