時刻は21時に迫っていた。平日ならともかく、日曜の夜の9時。それは、とても遅い時間と言えた。
まして、ひろみさんは家に2人の子供を置いて来ている母親である。考えないはずはない。
それでも彼女は、僕のためにベッドへ腰を降ろすのです。
そんな彼女が不意に手に取ったスマホが点滅をしていました。何かを受信したことを示しています。
画面を覗き込む彼女。開いていたのはLINEの画面でした。
『LINE?』と聞くと、『お母さんの携帯。子供から来てる。』とだけ僕に伝えます。
この時に時間です。彼女の母親から来たのならば、書かれている内容は容易に想像が出来ました。
『帰りましょう。子供、心配してるんじゃ?』
僕に気を使うひろみさんは、すぐには『はい。』とは言いません。彼女なりに、僕に性のお返しをするつもりなのです。
それでも10分後、部屋の扉は開きました。出て来た彼女は、『本当にごめんなさい。』と丁寧に謝って来ます。
駐車場に降り、それぞれの車へと分かれていく2人。ひろみさんがエンジンを掛けた瞬間、彼女はあるものを見つけます。
窓越しに彼女を呼ぶ、僕の姿でした。
パワーウィンドウが下がり、『ヨシ兄さん、何かありましたか?』と彼女が聞きます。
僕は下がった窓に手を置き、こう言います。
『ひろみさん、よかったら僕と付き合ってくださいっ!…、恋人にしてください!…、好きですから…。』
咄嗟に思いついたため、告白としてはまとまりのないものとなっていた。
セックスは済ませていたのに告白が遅れたのは、何もかもが急いていたのです。
『ヨシ兄さんさえ、本当にそれでいいのなら…。』
ひろみさんは僕の顔を見ながらそう言ってくれたが、顔色を変えることはない。
二人の子供を持ち、正式に亡くした夫の弟さんとそういう関係になると言うのは、彼女にとっても大きなリスクを持つ。
いつものやさしい笑顔は出ないのです。
『お願いします…、ひろみさんのことが好きですから…、』
そう返事をすると、彼女の車の扉がゆっくりと開き始めます。シートをスカートが滑り、彼女は車から出るのです。
僕と向き合うように立った彼女は、『ヨシ兄さん?本当に、私で大丈夫ですか?』と聞いてきます。
いい加減に生きて来ていた僕を、彼女は知っているのです。そして、いい加減な返事はされたくないのです。
『私はユウジさんと結婚してました。ヨシ兄さんのお兄さんです。それに、彼の子供も2人います。
私と付き合えば、2人の子供はヨシ兄さんにとっては迷惑になるかも知れません。それでも、いいんですか?』
年上のひろみさんが、真面目に聞いていました。そこには、いつものやさしい顔はなく、僕の本気を求めているのです。
正直に僕に不利益となることを伝え、本当の返事を待っています。
『それじゃ~。』
僕の伝えた言葉に、彼女の顔に笑みが戻りました。そっと肩を持たれ、ひろみさんの唇が僕に触れます。
険しかったひろみさんも、いつもの彼女を取り戻すのでした。
僕が彼女に何を伝えたかって?こんな真剣な場面に出くわしたことがない僕は超ぉ~緊張をしていて、さっぱり覚えてません。
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