真っ暗なこの家の中で、ひろみさんの寝室だけは明かりが灯りました。彼女はゆっくりと身体を起こすと、ベッドを降ります。
起きたひろみさんは、白の地味なパジャマ姿でした。足元のスリッパを履き、ベッドを出ます。
扉に立つ僕の方に近づくと、『ヨシ兄さん、ごめんなさい。寒かったですか?』と聞いてくれました。
寒さで僕が起きてしまい、困ってここに来てしまったと思ったようです。
心配をした目で、僕を見る彼女。しかし、その目はすぐに和らぎました。ここに来た本当の理由を、彼女なりに理解をしたようです。
彼女は、廊下に射し込んでしまっている部屋の明かりを気にして、扉を閉めました。
この家では、子供だけでなく、彼女のお母さんも熟睡をされているのです。
『ヨシ兄さん、どうしましょ?よかったら、そっちで寝ますか?まだ早いですし。』
それは、ひろみさんの寝ていたベッドのことでした。兄と一緒に使っていたであろう、ダブルベッドがそこにはあります。
『いいの?』という顔をした僕に、『どうぞどうぞぉ~。私は全然大丈夫ですから~。』と笑って言ってくれるのでした。
ひろみさんの薦められるままに、ベッドへと向かおうとした僕。しかし、後ろの彼女が僕を止めます。
『ヨシ兄さん、ズボンとか脱いだ方が…。』
着替えもなく、私服のままの僕はジーンズ姿で寝ていたのです。彼女は、それを気にしたみたいです。
ジーンズを下ろし、僕は先に布団の中へと入ります。そこには眠っていたひろみさんの体温、彼女の匂いが残されています。
『よいしょ~』と言いながら、後を追うように彼女が入って来ました。触れたその身体は温められていて、とても温かく感じました。
布団へと入って来た彼女はゴソゴソと身体を動かして、自分の位置を探します。
天井を見上げ、その位置が決まり掛けた彼女でしたが、隣の僕がそうはさせなかったようです。
ひろみさんの身体はこちらを向くと、僕の身体に抱き締められました。
僕の手が更に強く抱えようとすると、彼女ももう自分から強く僕に手を回して来るのです。
彼女とこうやって抱き締め合うのは、初めてだったのかも知れません。パジャマの上からでも、その気持ちは伝わって来ます。
身体を抱く腕には強く力が入り、手のひらは動いてお互いの身体を触ろうとしてしまいます。
そして聞こえ始める二人の吐息。ただ抱き合っているだけなのに、『ハァ…、ハァ…、』と息があがっているのです。
ついに、そんな二人の目が合ってしまいました。その瞬間、『ギィ~…。』とベッドが鈍い音を立てます。
彼女の身体の上へと覆い被さった僕の唇は、激しくひろみさんの唇を奪っていました。
彼女もまた同じで、僕の身体に手を回しながら、それに応えるのです。
(欲しい…、欲しい…、)
口にはしなくても、その気持ちはお互いの身体から出てしまっています。
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