日曜の午後、我が家に響く2つの足音。靴下も履いてない足で、ドタドタと床を踏みつけながら走っている。
その音だけでわかる。義姉のひろみさんが、孫の顔を見せにやっていたのだ。
呼ばれた僕は、二人の子供の相手をします。彼らは叔父の僕を、『ヨシ兄』と呼ぶのです。
それを教えたのは、ひろみさんでした。『叔父さん』と呼ばせるには、僕がまだ若かったからです。
『ヨシ兄さん、お仕事忙しいですか?』
そんな僕に、ひろみさんが聞いてくれます。返事をしますが、それは二人の子供とじゃれあっているから。
子供達がいなければ、僕がどこか緊張をして、微妙な空気にもなってしまいます。
兄が結婚をして6年。ひろみさんとは義姉弟の関係となったのですが、しっくりは来てはいないのです。
真面目でしっかりものの彼女と、ちゃらんぽらんに生きている僕。そんな二人の気が合うはずもありません。
それに彼女は41歳。年下ながらも、一人立ちをしていた兄を選びました。その点、僕は兄とは違い、母親任せの出来の悪い次男坊。
彼女とは13歳の年の差もあって、義姉というより、おばさんにしか見えてないのです。
一通り子供達と遊び、僕は部屋へと戻りました。『あとは母の役目。』、そう思い、せっかくやって来てくれた彼女たちと別れます。
真面目過ぎるひろみさんといると、どこか息苦しいのです。
僕がその場を去り、走り回る下の娘をひろみさんが掴まえました。娘を膝に置き、髪に頬を寄せるのです。
そんな彼女に、母は『逃げたわ。』と声掛けます。それはもちろん、僕のことでした。
ひろみさんは、『お義母さん、大丈夫、大丈夫~。ヨシ兄さんにだって、やることあるんだから~。』と母を諭すのです。
やること?部屋でゲームを始めていた僕には、そんな二人の会話が耳に入ることはありません。
そして、ある計画がぼんやりと進行を始めたことにも気づくはずはないのです。
それは6年前に兄を失い、未亡人となっていたひろみさんの再婚話。その相手は、両手にゲームコントローラーを持つこの僕でした。
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