②-4
翌朝。
「裏の北村さんがさ、駐車場 貸してくんないか?、ってさ」
『え?、寺田さんとこ借りてんでしょ?、何でまた…』
「ゆうべさ、駐車場の話しになって、手伝いに来てくれた人の中で うちに停めてた人が居たらしくて…、そんな話ししてる内にさ…」
『奥さん、向こう(自宅側)でしょ?停めてるの』
「何か停めるのも 乗り降りも こっちに停めた方が楽だから…とか」
「娘さんご夫婦も 結構 来てるみたいだしさ、お子さん連れて」
「かえって寺田さんちが気ぃ使うんじゃん?北村さんの車があると」
「で、お互い気を使わない方に…、みたいな事 ゆうべ言ってた」
『そう、別に構わないわよ、空いてるんだし…、そんなに出たり入ったりしないみたいだし北村さんの奥さん、おつかい位なんてしょ?、良いんじゃない?』
「改めてお願いに来るってよ、香代さんに」
『そぅ、分かった』
『朋さん、今夜でしょ(忘年会)?、何時に出るの?、送ってこうか?』
「武島に拾ってもらう、コインランドリーの前で、15:00位かな?」
「二木ゴルフ寄って それから…」
『打ち納め?』
『武島さん 呑めないの?、(ゴルフの)昼食でも呑んでるの見た事ないけど』
「乾杯で真っ赤!」
『そうだ朋さん、ボール買って来て 初打ち用の、いつものやつ、ロストで良いから、ね?』
「あいよ!」
『じぁね、行ってきます』
そんな会話で妻を送りだした。
ボールは きっと そぅなるだろうと あらかじめ買っておいた。
が、New、初打ちだから とか言って誤魔化すか?、そんな事を思った。
妻につづいて玄関を出ると 幸子さんの姿があった。
『おはよーございます、昨夜スミマセンでした』と頭を下げた妻
「おはよーございます、ご馳走さまでした」と、つづけた。
『いいえッ、こちらこそぉ』と、幸子さん。
妻の車を見送り、改めて
『どうも ご馳走さまでした』と、
頭を下げながら
『寺田さん(ご主人)は?』
と訪ねると、もともと定期健診の日なのだと言う。
『また どっかで油売って帰って来んでしょ、いつも そうだから』
『香代さん いつも土曜日は お仕事なんでしょ?』
「はい」
『…必要よね?、1人の時間も、羨ましいわ…』
「でも、(ご主人)しばらく帰らないんじゃ?」
『そうよぉ。でもね そこが問題なの。自分は好き勝手してるくせにさ やれ何してただの 何処行ってただの、私の事は監視するのよ あの人』
「心配なんじゃないですか?
『(心配)何の?』
『ランチして来たとか言ってもさ 誰とだ? 何処行った?、って そんな事まで聞くのよ、嫌んなっちゃう!』
「じゃぁ行きますか?ランチ、俺と」
「野平さんと藍屋でランチして来た、って言えば良いじゃないですか?」
「そしたら少しは慌てるかもしんないですよ?」
『良いわね それ!』
『冗談 じゃないわよね?』
『デートしてくれるの?』
「ゴメンなさい…」
「冗談の つもりだったんですけど」
『えぇッ、してくんないの?デート』
『孝子さんとは してるのにぃ?』
「デートって程のもんじゃ…」
「それに ちゃんと報告してますし 香代さんには…」
(何処まで知ってんだろ?)
咄嗟にそぅ思った俺は 妻に報告してるなんて嘘までついてしまった。
『だから 私とはしてくれないの?』
「いえッ、そんな事は…」
「お誘いしても たぶん断られるもんだと…、その…、思ってて…」
『なら 誘って!』
「はいッ」
「・・・・・」
『誘って!』
「ラ、ランチ、ご一緒に…」
「…如何ですか?」
『はいッ、喜んでッ(笑)』
「って、俺 今夜 忘年会で14:00には戻らないと、その…」
『何ぁに?』
『忘年会じゃなかったら 夜まで付き合わせるつもりだったの?』
『どぅするつもりだったのかしら?、夜まで付き合わせて(笑)』
「いえ」
「あの…」
「だから その…」
「お見せしよぅかな、と…」
「途中でダメになったりしませんよ!、って」
『キャッ、恥ずかしい(笑)』
『でも それ 別に夜じゃなくても 構いませんことよ(笑)』
「・・・・・」
『もぉッ、野平さん?』
『冗談よ、冗談(笑)』
「ああ、びっくりしたぁ(笑)」
『でも お昼は ご一緒して、ね?』
「はい、それはもう、こちらこそ 喜んでッ」
「ダメになるか ならないかは また改めて、って事で…」
『そぅね、また改めてね?、ふふふ』
何処までが冗談で、何処までが本気なんだか解らない 寺田さんの奥さんの話しに圧倒されながらも、俺は精一杯 平静を装って 冗談っぽく返した。
『で?、何時にします?ランチ』
「10:00とかでも大丈夫ですか?」
『早くない?、ランチにしては』
「いえいえ、俺が少しでも早く寺田さんの奥さんと お出掛けしたいだけですから、迷惑ですか?」
『迷惑ではないけど、何か目的が有るんじゃないの?』
「ええ、実は二木ゴルフにちょっと…、そのあとでも良いですか?」
『二木ゴルフって!』
『目的は そっちかぁ(笑)』
『まぁ良いわ、10:00ね、出て待ってればいい?、乗せてってくれるんでしょ?』
「はい、それは勿論…」
『やったぁ!』
『デートッ! ドライブッ!』
『じゃぁ宜しくね、朋さんッ!』
はしゃぎながら 悪戯っぽく言った幸子さんの〔朋さん〕が妙に気にかかっていた。
9:57
俺が玄関を開けると、そこには既に 幸子さんの姿があった。
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