ベランダの1番左・・・それが私から見て左なのだと、信じたくないがわかっていた。
私を覗き、汚い精液を出す男がいる側なのだと。
初めて気づいた日、私は小さく悲鳴を上げた。
目をそらした後も、いやらしい目が脳裏に残っていた。
男は首を伸ばし、露骨に覗き込んでいた。
私が気づいたのに、その体は小刻みに揺れ続けていた。
それを目の端で捉えた私の手が、凶悪なディルドを動かし始めた。
その日から男は、日に日に露骨になった。
いつからか声まで掛けてくるようになった。
その言葉は、下品にエスカレートしていった。
「奥さん、いやらしいね」
「淫乱な顔だね」
「そんな顔を見ただけで、精液でそうだよ」
男はニヤニヤと笑いながら、隠す素振りすらなく扱き続ける。
分厚い唇から黄色い歯を覗かせながら笑い、射精が近づくたびに私に伝えてきた。
「いきそうだよ、出そうだよ」
そう言いながら私を誘った。
「こっちに来なよ」
「触らせてよ」
「こっちに来たら触って“あげるよ”」
そんな言葉を吐きながら、射精の瞬間を私に伝えながら果てた。
私は背中を這い上がる嫌悪感を感じながら、湧き上がる興奮を『逆らえない封筒の男』だと思い込むのに必死だった。
そしてとうとう『逆らえない封筒の男』の文字が、私に命令を伝えた。
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