解放された時には、壁の時計は4時を回っていた。
手足の拘束を解かれてもすぐには動けず、床に這いつくばって服を着た。
手から下着を奪われたが抵抗する力も、気力も残ってはいなかった。
体を支えられて診察室を出て、受付のカウンターに手をつきながら歩いた。
解放されてから30分もかけて、ようやく体の感覚が戻り始めていた。
フラつく足取りで歩き、あと少しで玄関の扉に手が届くところで篠宮から呼び止められた。
「・・・最後に、もう一回だけ扱いてやるか?」
そう言って、手に持った吸引器を見せつけ、ヒャッ、ヒャッ、ヒャッ、、、と笑った。
私には篠宮が悪魔に見えていた。
この男は、もしかしたらこれまでも、こうやって誰かを壊してきたのかもしれない。
そう思った。
時間をかけ、ゆっくりと回復していく体。
けれど快楽の余韻ははっきりと残っている。
頭の中に脳内麻薬が分泌され続けているのがわかる。
解放を望んでいるはずの私の心に刺さる、小さな刺のような快楽への欲望・・・・それをハッキリと形にして、見せつけ認識させて絶望させようとしていると感じた。
断らなくては・・・このままでは壊れてしまう・・・
そう強く思う心は、篠宮の手がたった一回、吸引器のゴムボールを握っただけで折れてしまった。
透明の管を通り過ぎる空気の音を聞いただけで、私は篠宮に頷いていた。
篠宮は私を見て、勝ち誇ったような笑みを浮かべた。
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