康介:『おはよう…真理子。ふぁぁ…んん…何だか、疲れ取れないなぁ…』
スーツ姿の康介が、リビングに入って来ると大きな欠伸をしながら真理子に話しかける。
真理子:『あ、おはよう…康介さん…大丈夫?あまり、無理しないでね…』
朝食の用意をしながら、康介に言うものの、真理子自身も男からのメールの事で…昨日は、なかなか寝付けずにいた。
しかし、そんな事は康介に気づかれないように気をつけていて…
康介:『ありがとう…でも、そうもいかないんだよね…コロナのせいで、色々と仕事が多くなってて…』
真理子:『そうなのね……無理しないでね。……えっと、あの…今週の土曜日か日曜日…大学時代のお友達がこっちに来ていて…会って食事したいんだけど…いいかしら?』
康介と一緒に朝食を食べ始めながら、真理子は夜も寝ずに考えていた出掛ける嘘を康介に思い切って言ってみた…
康介:『ん?…そうなの?土曜日なら良いけど…実は、土曜日に、もしかしたら、僕も仕事になりそうだから…』
真理子:『あら…そうなのね…じゃあ、土曜日に出来るか聞いてみるわね。』
真理子は、康介に嘘をついてしまい、後ろめたい気持ちを募らせて返事をする。
そして、朝食を終えて…康介を見送るまで、じっと目を見ては話せずに居られず、平静を装うのが必死だった。
康介が出勤して…真理子は1人になると男へのメールを打ち始める…
【おはようございます…
もう、あの事は言わないでください…自分も思い出すだけで恥ずかしくて……
メールの返事ですが、土曜日でお願いします。】
男から来たメールを読み返しながら、真理子は男へのメールを打っていると、男に対する気持ちが変わり始めている事に気づく。
それは、最初は男への嫌悪や拒絶を見せていた真理子の心の中で、男に対して、拒絶とは違い…寛容的に男を受け入れ始めている真理子自身がいて…
そして、真理子はメールを送信すると、いつものように外へゴミ出しをする為に収集場所へと歩いていく。
そこには、いつも見かける男性がいる…
真理子:『羽生さん…おはようございます。良いお天気ですね…』
その男は真理子の家の隣に住む羽生という男で、いつも同じ時間にゴミ出しに顔を合わせていた…
羽生:『おはようございます…そうですね…行って来ます。』
羽生は、ニコリと微笑みながら会釈すると、ボソリと短く返事をする。羽生の服装はいつもの部屋着ではなく、スーツ姿で会社に行くようで…
真理子:『行ってらっしゃい…今日は会社なのかしら……?まさか…そんな事にないわね…』
真理子は羽生に微笑んで見送ると、その後ろ姿を見て…珍しくスーツ姿で出掛ける羽生に驚きながら…ポツリと独り言を呟き…
まさか、あの男が羽生ではないと思いながら…自宅へと戻って行くのだった。
自宅に戻った真理子は家事を済ませるとスマホを開いて見る…男からのメールは、まだ届いてなく…
真理子:『はぁぁ……あっ……』
真理子は溜息を1つ吐くと突然、スマホに一通のメールが届いて驚く。
【土曜日…ですか…それまで待ち遠しいですね。それまで…貴女は待ってられるかね?
良かったら、こんな動画見つけたので見ておいてください。あとで…感想聞かせて欲しいなぁ…待ってますね。https://…】
男からのメールを読むと書かれていたアドレスをクリックする……
真理子:『カチッ…あぁ……』
液晶画面に映る動画を見始める真理子は、まだリビングに入り込む明るい窓の光を遮るためにカーテンを掛けるのだった…。
真理子の心の奥にある牝が目を覚まし始めて……
(続く)
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