8階まで来て、ここかもしれないと感じた。
けれど9階の廊下に立ち、ここだと確信した。
携帯の画面と光景が、完全に一致していた。
(この人は、ここで・・・)
そんな言葉が頭に浮かんだ。
そして携帯の画面に写る全裸の女性に、真っ黒に塗りつぶされたその顔に 自分の顔を重ねていた。
変態だと思った。
異常な行為だと思った。
しかし、体は火照っていた。
(こんな場所で・・・)
いつもと変わらない日常の中で、住み慣れたマンションの廊下。
そんな場所で、この女性は全裸に・・・。
心臓の音が鳴り響く意識のまま携帯の画面をスクロールしていくと、画面の中で女性は跪き、男性器を口に含んでいった。
黒塗りになっていて顔はわからないが、口元を見ただけで それが恐怖ではなく幸福の表情である事は感じ取れた。
そして画面の女性は男性器から飛び出す精液に向かって、開いた口から舌を出して受け止めていた。
膝がガクガクと震えた。
今にも崩れ落ちそうだった。
その時、麻紀の耳がエレベーターの扉が開く音を聞いた。
麻紀は とっさに非常階段の壁に隠れた。
心臓の鼓動が痛かったが、その耳は廊下を近づいてくる足音に集中していた。
そうしながら足音が901号室の扉の前に立つのを、扉が開かれるのを、そして裸足の足音が玄関の扉から廊下に出てくるのを聞いた。
この裸足の足音は、あの女性だ。
そう確信しながら、麻紀はゆっくりと非常階段を登っていった。
足音をたてないように慎重に、けれど急いで10階に登り、体を非常階段の壁に隠しながら9階を覗いた。
指は無意識のまま スカートの中に伸びていた。
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