Y「起きて、起きて!まずい。遅刻するよ!」
再び目が覚めた時に聞こえたのは、Yさんの焦った声だった。
急いで時計を見ると、時間は8時22分だった。
羽山「わぁ!」
Y「羽山君、急いで着替えたら間に合う!?」
羽山「なんとか10分前に着くと思います!」
Y「ごめん!私もすっかり眠っちゃった。」
羽山「いや、僕も寝てましたから!」
Yさんは下着をつけながら、早口でまくしたてるように話しており、夜に見せた顔は微塵も感じさせなかった。
Y「ごめん!ちょっと、私一回家に戻って、着替えたりとか、準備あるし、車離れてるから、先にお店向かってくれる!?私、後で遅刻するって、お店に電話するから!」
羽山「分かりました!」
僕は、急いで服を着て、部屋を出た。
駐輪場に戻り時間を見ると、8時35分だった。
お店には、飛ばせば15分くらいで着くはずだ。
お店に到着したのは出勤7分前だった。
店長「お、羽山君おはよう。良かった、間に合って。Yさんから電話あって、お子さんの具合良くないから病院行ってから出勤するって連絡あってね。1時間くらいは私がカバーするよ。」
羽山「あ、そうなんですか。」
僕はわざととぼけて知らないフリをした。
流石Yさんだった。
僕は朝番のクルーと交代し、レジ点検を始めた。
交代から1時間したころ、Yさんが駆け足でお店に入ってきた。
Y「おはようございます。すみません!遅刻しました!」
Yさんは、そう言いながら、バッグヤード内へ駆け込んでいった。
デニムのズボンに白いブラウスにカーディガンと眼鏡。
いつものYさんの服装だった。
暫くしてカウンター内にYさんが入ってきた。
Y「羽山さん、おはようございます!遅刻してすみませんでした!子供病院連れていってました。」
羽山「あぁ、僕は全然大丈夫です。お子さん、大丈夫ですか?」
Y「はい。今、主人が見てくれてます。とりあえず、まだやってない作業ありますか?」
羽山「店内清掃まだです。」
Y「分かりました。じゃあ、店内清掃やっちゃいますね。」
そう言って、Yさんはバックヤードに下がっていった。
やっぱり、何事も徹底するYさんに、僕は頭が下がる思いで、土曜日の昼を過ごした。
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