Yさんは、秋葉原のアイドルグループの歌を歌った。
力強い歌声で、今まで以上に本気を出して歌っていることが見ていて分かる。
Y「…心に素直になれっ」
最後のフレーズを歌い終えると、マイクを机に置いて大きく息をつきながら
Y「あーっ、苦しかった!おばさんになると肺活量が落ちちゃって、厳しい~。」
羽山「いや、全然うまかったですよ。僕、負けるかな…。」
大型モニターに点数が表示される。
93.874点
Y「あー。1番いい時、95点代出したことあるけど、ダメだったかぁ。」
羽山「いやいや、でも90点代出してすごいですね。」
Y「んー。一応自信ある曲だからね(笑)さ、次羽山君の番ね。」
僕はYさんから、タブレットを受け取り、曲を検索する。
歌う曲は決めていた。
世界の終末という男女のバンドが歌う、火と木の祭典、という歌だった。
僕は、この歌の歌詞に乗せて、僕自身の気持ちをYさんに伝えたかった。
このバンドには、ピエロが一人いる。
僕も、Yさんに、心が踊らされたピエロだった。
でも、ここまで来たなら、もうピエロになりきろう。
結果は多分無理だと分かっていても、自分の思いを聞いてもらわない限り、前には進めない。
そう思い、僕はマイクを手にして、前奏が終わるのに合わせて歌い始めた。
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