それからというもの、僕は月に一度のペースでYさんとお昼を食べにいくようになった。
行く店は僕が決めたり、Yさんが決めたり。
ただ、支払いは何だかんだ押しきられて、毎回僕にさせてもらえなかった。
新年を迎え、成人式の連休明けに、僕はYさんと隣町にある神社に遅い初詣に行った。
平日の昼間ということもあり、神社に参拝している人はいなかった。
Y「あーあ。私も、もうすぐ40歳かぁ。」
ベージュのトレンチコートを着たYさんがふと呟いた。
羽山「あ、誕生日近いんですか?」
Y「そ。もう嬉しくないけどね。羽山君も、歳取ってくると分かるよ(笑)」
仕事の時は、羽山さん、と敬語で話してくれていたが、プライベートでは完全にくだけた話し方をしてくれていた。
羽山「まぁ、年を重ねるうちに誕生日なんて、どうでもよくなりますよね。」
僕は社務所に行き、お守りを一つ買って、Yさんに渡した。
羽山「はい。誕生日プレゼントです。」
Y「え?ありがとう(笑)」
Yさんも、社務所に入りお守りを買って僕に渡してきた。
Y「じゃあ、羽山君の就職がうまくいくように。」
そう言って、Yさんは祈願成就のお守りを僕にくれた。
羽山「ありがとうございます。」
Y「ご利益あるといいね(笑)」
羽山「Yさんは、何社くらい受けました?」
Y「え~と……4社?かな。」
羽山「ちなみに、大学の学部はどこだったんです?」
Y「心理学部。」
羽山「心理学部ですかぁ。てっきり経済学部とかだと思いました。」
Y「私も銀行に就職するなんて、考えもしなかったからねぇ(笑)経済学の講義受けてたけど、主人にテストの回答とか考えてもらってたし(笑)」
羽山「旦那さん、すごいですね。」
Y「いや、すごくないわよ(笑)ただ、高校の社会も、日本史とか世界史より、政治経済とか現代社会が得意だったみたい。」
羽山「僕は、地理と日本史でした。」
Y「私、社会が嫌いだったからな(笑)全然頭入らなくて。」
羽山「そうなんですか。僕は嫌いではなかったかなぁ。」
Y「やっぱり、個人個人向き不向きはあるよね。」
僕達は、Yさんの車に乗り込んだ。
Y「さーて、お昼も食べたし、帰りましょうか。」
羽山「はい。」
ホントはこのまま、どこかに出掛けたい。
だけど、僕にはそれを言う勇気はなかった。
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