火曜日。
今日はYさんとの勤務だ。
だが、昨日の生澤とのやり取りのせいで、僕の心は少し沈んでいた。
出勤すると、Yさんは既に制服に着替えて、引き継ぎノートに目を通していた。
羽山「おはよーございます。」
Y「おはようございます!」
いつも通りのYさんだ。
僕の心の中を支配している女性。
だけど、決して満たされることはないであろう思い。
僕は憂鬱な気持ちで着替えをしていると、Yさんが声をかけてきた。
Y「羽山さん?どうかしたんですか?」
羽山「え?……あぁ、いや、大丈夫です。何でもないですから。」
Y「そうですか…。何か元気ないから。」
羽山「まぁ、そんな日もありますよ。」
Y「そうですか。」
制服に着替え終えると、Yさんから引き継ぎノートを渡されたので、僕はノートに目を通し、出勤ボタンを押して、ルーティン作業の発声トレーニングをYさんと共に終えた。
Yさんはレジ点検を終え、いつもの店の日常に入る。
僕は店内清掃をしたり、Yさんが、FF商品を補充したり、ドリンクの補充をしたりと、自然と決まった担当作業をしていた。
そして、Yさんが昼休憩を取っている時に、事件は起きた。
客「アイコスのレギュラー1カートン取り置きしてた三好だけど。」
羽山「少々お待ち下さい。」
僕は、タバコ棚の下の扉を開けて、アイコスのレギュラーを探す。
しかし、カートンが見つからない。
僕は、バックヤードに入り、タバコが入っているロッカーを開いたが、アイコスレギュラーのカートンは見つからなかった。
羽山「あれ?ない。」
Y「何がないんですか?」
Yさんは、サンドイッチを食べながら聞いてきた。
羽山「アイコスレギュラーのカートンです。予約してたみたいで。」
Y「あ、それなら、タバコ棚の隣に黄色の付箋がはってあるやつじゃないですか?」
羽山「ん?あれ?いや、……お昼前に売っちゃいました。付箋貼ってあったんだけど…。」
僕はポケットの中から剥がした付箋を出す。
Y「えぇっ!!昨日の夜勤からの引き継ぎノートに付箋貼ったアイコスは取り置きって書いてありました……よね?」
僕は引き継ぎノートを急いで手に取る。
確かに書いてある。
そして、僕の確認のサインもしている。
『………しまった。忘れていた。』
僕は顔面が真っ青になる。
Y「………ちょっと、羽山さんは、絶対ここにいて下さいね。」
Yさんが急いでバックヤードから出ていく。
Y「お客様、申し訳ございません。こちらの手違いで……」
そう言いながら、Yさんがバックヤードから出ていった。
客「ふざけんなよ!!ちゃんとこっちは電話しといたぞ!!」
Y「申し訳ありません。後程またご連絡致しますので。」
客「値上げ前に買うつもりだったんだから、何とかしろよっ!」
モニター越しにYさんが怒り狂う客に必死に謝っていた。
客「今日用意出来なかったら許さねぇからな!」
客はそう言うと、手にしていた菓子パンをYさんに投げつけて出ていった。
僕はすぐにカウンターに出た。
羽山「Yさん、大丈夫ですか!」
Y「大丈夫です。羽山さん、私店長に電話したいんで、カウンターいいですか?」
羽山「はい。」
僕がそう答えると、Yさんは客の投げた菓子パンを手に取り、自分で購入した後、バックヤードに引き上げていった。
※元投稿はこちら >>