Y「いらっしゃいませ!」
僕が店内に入るなり、Yさんの声が店内に響いた。
羽山「おはようございます。」
僕は努めて冷静を装いながら、Yさんに挨拶をする。
Y「あ、おはようございます。」
Yさんも挨拶を返してくれる。
店長が、チルドコーナーを見ながら発注をしていたので、僕は店長にも挨拶した。
羽山「おはようございます。」
店長「お、羽山君おはよう。」
バックヤードに入るなり、店長が声をかけてきた。
店長「なぁ、羽山君、相談なんだが、お昼のシフト土曜日以外入れる日ないか?」
羽山「え?ホントに人足りてないんですか?」
店長「うん。夕方からのシフトは回せるだけの人数はいるんだけど、昼間はYさんと、渋谷さん、門脇さんと俺しかいないからな。まぁ、足りなければ俺がこうして出ればいいんだが、昼間に支部で会議とかあったりすると厳しいからな。だから、どちらかと言うと昼間の人手を厚くしたいんだ。」
僕はこれを聞いて内心喜んでいた。
羽山「あー。まぁ、大学の授業は火曜と水曜なら落としても大丈夫なんですけどねぇ…。」
実際、1年と2年で卒業に必要な単位を大方取得しており、必修単位の授業は月曜日と金曜日に入れていた。
本当は木曜日も大丈夫なのだが、Yさんが働いている火曜と水曜をあえて指定してみた。
店長「本当か?助かるなぁ。じゃあ、火曜日に昼のシフトに異動してもらっていいか?そこの夕方のシフトは新しい人見つけるまで俺がはいるから。」
羽山「分かりました。」
店長とやり取りしているうちに、もう一人のクルーである溝口君が、出勤してきた。
溝口「おはよーございまーす。」
僕と溝口君は制服を羽織り、カウンターに入り、接客をしていたYさんと交代する。
今日は僕がレジ点検を担当することになった。
Y「おはようございます。お札はある程度まとめてあります。ちょっと50円足りないかもしれません。」
羽山「了解しました。」
僕はYさんの顔をまともに見ることが出来ない。
お金を数えている間、Yさんはその様子を僕の斜め後ろで見ていた。
Yさんが近くにいるだけで、ドキドキしてしまい、作業に集中出来ない。
Y「100円玉、37枚ですよ。」
羽山「あ、ホントだ。」
単純な数え間違いをYさんに指摘される。
Y「この前は、ホントすみませんでした。」
斜め後ろから、Yさんが聞こえるか聞こえないかの声で謝ってきた。
羽山「え?あぁ。いやいや、大丈夫です。僕こそ突然入ってしまって、すいませんでした。」
ようやく、Yさんと顔を合わせることが出来た。
そして、お互い顔を見ながら、二人でクスクスと自然に笑いがこぼれていた。
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