[すぐお休みになるの?]
そう返ってきた。
[シャケと味海苔とお味噌汁]
[来る?]
[ダメ?]
[来て]
[ね]
[勝手口]
[開けておくから]
俺が返事を探していると 矢継ぎ早の着信。
[はい]
俺は そう一言だけ返して慌てて飛び出した。
昨日掛けた橋を横目に見ながら クルッとフェンスを回った、孝子さんに言われた通り 木を一本切ったのは正解だった、都合が良い事 この上ない。
孝子さんの家の勝手口に手を掛けて ふと足元を見てギョッとした。
サンダル履き、加えて着ている物といえば 部屋着兼パジャマにしている薄いスウェット、右のポッケには鍵とジッポー 左のポッケにはスマホと煙草、両方のポッケがパンパンに膨らんでいる。
俺が勝手口の扉を引く前に 扉が押された。
『いらっしゃい』
顔を覗かせた孝子さんがニッコリとしている。
『どうぞ 上がって』
と来客用なのかスリッパまでが準備してある。
「おじゃまします」
勝手口と言うだけあって そこはダイニング、テーブルとセットの椅子を引いてくれた。
あれこれ妄想は繰り返したものの、この急な展開に 何をどうしたものか さっぱり分からない、「失礼します」と座るのがやっとだった。
尚も どうして良いか分からず 両方のポケットからスマホやら鍵やらを出して テーブルの上に置くのが精一杯だった。
何が正解で何が間違いなのか、そんな事を考える余裕など更更なかった。
『はい、灰皿』
『まってて、(シャケ)すぐ焼けるから』
「あ、ありがとうございます」
そう言ってタバコに火を着けてスマホを開いた
[お魚焼きながら勝手口の中で待ってます]
そう北村孝介さんから着信があった。
『ねぇ朋さん』
「はい?」
『ショートメール、すぐに消してね』
『LINEだと名前だけ残ってるの 逆に変でしょ?、ね?、いちいちゲストの面倒だし』
冷静なのか手慣れているのか?、この際そんな事はどうでも良い、ゲスな考えだが[手慣れている]なら それはせれで面倒が無くて有難いのかもしれないし…。
ショートメールと通話だけのやり取りを暗黙に了解した。
『はい、おまちどうさま』
ご飯 味噌汁 味海苔 シャケ お新香、手際よくテーブルにならんでゆく。
『どうぞ 朋さん』
「いただきます」
俺がタバコを消そうとした時
『ちょうだい』
そう言った孝子さんがタバコを取り上げた。
歳甲斐もなく思わぬ間接キッスにドギマギした
「タバコ 吸うんですか?、北村さん」
『北村さんはヤメてね…、なんだかんだ主人を呼ばれてみたいで嫌なの…』
『お義母が一緒の時はね…、隠れて…、ストレスって奴?、看取るまでは…』
『何年ぶりかしら?、クラクラするわ…』
「…なら よした方が…」
『そうね…、ありがとう』
孝子さんがタバコを消した。
「いただきます」
『どうぞ、召し上がれ…』
『お口に合えば良いけど…』
「何だか 旅館の朝食みたいで新鮮です、いただきます」
『もぉぉ、何回言うの(笑)』
きっと ご主人を気遣っての事だろう?、味噌汁は幾らか薄く感じた。
「こんなパジャマみたいな格好で来ちゃって…、ゴメンなさい 慌ててしまって…」
「初めて他所様のお宅を訪ねる格好じゃないですよね?、ホントごめんなさい」
『いいじゃない それで…』
『何なら 私の新しい主人て紹介しようかしら?(笑)、みんな 若い主人を羨ましがるわね きっと(笑)』
『遠慮しないでね、嬉しいの私[お近づき]になれて、ありがとう朋さん』
「美味しかったぁ」
「ご馳走様でした」
『あら、ホント?』
『嬉しいわぁ、美味しいなんて もう何十年も言われてないから…、ホント嬉しい』
『あら、私ばっかりしゃべっちゃってゴメンなさいね』
『お茶にする?、それとも珈琲?』
『何ならビールにする?寝酒に…』
『ダメ?、付き合って?、ね?』
「ダメって事はないですけど…」
「効きますよ、朝のビールは、良いんですか?、俺 あとは帰って寝るだけですけど」
『うん』
『私も あとは 特に出かける用事もないし』
『ね?、良いでしょ?、付き合って』
「はい、では…」
『良いわよね? 缶のままでも…』
「はい」
『じゃあ乾杯!』
『ありがとう!、朋さん、お近づきになれて』
「こちらこそ」
「乾杯!」
350缶ではあったが 驚いた事に 孝子さんは一気に呑んでしまって2本目を明けていた。
俺といえば 時折タバコを挟みながら付き合うのが やっとだった。
『うちの旦那は 有名調味料会社に勤めて何年になる』とか
「俺は 某トラック会社」だとか
「寺田さんは 某家電メーカーで 奥さんは看護士だった」とか
「うちの妻は ◎◎施設に行ってる」だとか
『家の班は 仲が悪くて困ってる』だとか
そんなザックリとした自己紹介みたいな話しや 近所の情報交換に花が咲いた。
「じゃ、そろそろ…」
『そうね、お休みになるんだものね?』
『あんまり 引き留めたら悪いわね?』
と、勝手口まて見送ってくた。
サンダルを引っ掻けて 挨拶をしようと孝子さんを見上げた。
一瞬の沈黙が2人をつつんだ。
驚いた、期待していた事とはいえ 孝子さんからとは 流石に驚いた。
孝子さんが俺の頬を押さえて唇を重ねてきた。
軽く[チュッ]として離れた孝子さんが
『ちょうど良いわね この高さ…』
そう言って 覆い被さる様に また俺の唇を塞いだ。
孝子さんが 俺の首に両手をまわし、俺は両手で孝子さんの腰を抱き寄せた。
孝子さんの舌が俺の唇を割った。
俺も舌を伸ばして 孝子さんの舌を迎えた。
サンダルを脱ぎ捨て 一段高い所に上がった。
俺は頭を左右しながら 乱暴に舌を這い回らせる、孝子さんは 俺の舌を吸い 自分の舌を絡ませながら応えてくれた。
いつしか俺の両手は 孝子さんのお尻をスカートの上から撫でまわしていた。
俺の首に巻き付いていた孝子さんの右手が 徐々に下に降りてくる。
そして 俺の怒張を探り当てた。
『…きて』
孝子さんが 俺の首に手を回したまま 後退ってゆく。
俺の首に手を巻き付けて 舌を絡ませ合ったまま 孝子さんが後ろ足で階段を登ってゆく。
孝子さんのお尻を撫でいた俺の手が 無意識のうちにスカートの中に潜り込んでいた。
肌触りの良いショーツに沿って 指先が ゆっくりと ゆっくりと 前へと進んだ。
窮屈な格好で…、それでも まだ唇を重ねたまま 一段一段 登った。
孝子さんの[寝室]に繋がる階段を…。
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