部屋に入って来た加代子さんでしたが、その足は止まっていました。僕の目が輝き、自分が見られていることに気がついたのでしょう。
顔を真っ赤にさせてしまい、とても僕の方を見ることが出来ません。彼女にとっても、この衣装を着ることには大きな決断が必要だったようです。
『うわぁ~!なによ、それぇ~?鼻血が出るわぁ~!』
僕の言葉に彼女の目線は上を向き、顔は更に赤く染まります。居たたまれないのでしょう、閉じた口が微妙に動いてしまっています。
上げていた目線がようやく下がると、加代子さんの口から、『恥ずかし…、ほんと恥ずかし…、』と小さく呟かれます。
彼女のことですから、ネット購入ではなく、カタログ販売をしている某大手通販会社で購入をしたものでしょう。
きっと僕のことを思い、厚いカタログとにらめっこをしながら、なんとか今の自分にでも着られるくらいのものを探したのだと思います。
ただ、普段の真面目な彼女を知っているだけに、そのギャップというのは相当なものだったのです。
『もう少し、スタイルを良くして着てみようと思ってたんだけど…。』
知りませんでした。最近始めた夕方のウォーキングは、ただの運動不足の解消のためだと思っていました。
しかし、それは違っていて、自分を求めてくれる男性を少しでも喜ばせてあげようと、昔のスリムな身体を取り戻すためのものだったようです。
ベッドから立ち上がった僕は、入口で立ったままになっている加代子さんへと近づいて行きます。彼女はもう動けずにいたようです。
掛けた指が胸元を広げ、隠れた中のブラジャーを覗き込みます。大きな谷間の先には、僅かにパープルが染められた白のブラジャーが見えました。
それはシルク生地で、とても高級な感じが漂っています。『これ、高かった~?』と聞くと、『全然、安いのよぉ~?』と彼女の顔に笑顔が戻ります。
見られることより、値段を聞かれたことで、主婦としての彼女が思わず出てしまったようですね。
『僕のため?』と聞きましたが、すぐには答えてはくれません。頭にはいろんな返事が巡り、そのチョイスを考えているようです。
そして、『あなたのためです…。おばちゃん、あなたに喜んで欲しくて、こんなの買ってしまいました…。』と告げてくれていました。
うつ向いた顔には悲壮感にまみれ、年甲斐もない行動をした自分を少しだけ恥じているようにも見えます。
『ありがと…。』
一言だけそうお礼を言うと、いつもとは違う大人の雰囲気を醸し出す彼女の手を取り、ベッドまでエスコートをします。
彼女の身体からは、独特の匂いがしていました。それは、買ったばかりの新しい衣服の匂い。新鮮な香りです。
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