『ほら来い!お前来い!』、信哉の手は整えていたはずの加代子さんの髪をわしづかみ、リビングから廊下へと引き出していく。
彼女は、『信哉さん、ごめんなさい!私が悪かったから…、全部謝りますから~!…、』と詫びますが、彼の手は更に髪を掴みあげます。
引き摺られていく彼女の身体は、ある部屋へと入れられました。それは、隣の部屋。つまり、あの旦那さんと川田くんが奉られている仏壇のある部屋です。
掴んでいた手が離れ、加代子さんの身体は畳の上へと倒れ込みます。彼女は起きあがることはせず、ただ身を小さくして、彼の行動に注意を向けています。
『なあ~?裸、見せてくれや?俺、女の裸や見たことないんや?』と言われましたが、身を伏せたまま動くことはしません。
『信哉くん、ごめんなさい…。私が悪かったから、謝ります!ごめんなさい…。』と、ただ彼の機嫌が戻ることを願います。
しかし、『謝らんでええわぁ~!脱げって言ってるんや~!』と捲し立てられ『はよ、お前のマンコ見せぇ~~!』と屈辱的な言葉を浴びせられるのでした。
それは、屈辱以外の何物でもありません。『愛しています!』なんて言ったのはウソ、欲望を満たせれば女ならば誰でもよいのです。
『信哉さん?ほんとごめんなさい…、』、ようやく身体を起こし、謝罪をしようと改めかけた彼女は、初めて彼の方を見ました。
その姿に驚愕をします。あぐらをかいて座っている信哉の両手には2つの遺影が持たれていて、3人の目が加代子さんの方を見ていたのです。
彼女の目からは、大粒の涙が溢れていました。三人に見られているとか、『脱げ!』と言われたことが理由ではありません。
『この子はどこまで人間が腐っているのか…、』と目の前に座る従弟を思うだけで、悲しさが込み上げて来てしまうのでした。
『もう、そんなことなんかしないでよぉ…、』
振り絞った最後の言葉。しかし、『ほら、死んだおっさんもコイツも見てくれてるわ。ほら、服脱げ!』という彼の心ない言葉にかき消されてしまうのです。
加代子さんはゆっくりと立ち上がります。信哉も逃がすまいと身構えましたが、それは無駄足だったようです。
立ち上がった彼女は、泣きながらも着ていたセーターに手を掛け、それを脱ぎ始めていました。
亡くなった旦那さんと川田くん、そして信哉に見守られながら、彼女はその裸体を晒していきます。
しかし、彼女は今、その三人のことは考えてはいませんでした。心の中で、ある人物にこう叫んでいました。
『ナオミチちゃん…、助けて!!…、』
※元投稿はこちら >>