正月を明けても、信哉の訪問は続いていた。1ヶ月に一度、決まったように現れる彼を不審には思うが、加代子さん自身もそれを断る理由が見当たらない。
来れば仏壇に手を合わせ、不器用ながらも息子を弔ってくれている。そんな彼を、少しづつではあったが彼女は見直し始めてもいたのです。
もう何年もニートな暮らしていた信哉。1ヶ月に一度だが、加代子さんと会うことは、至福の時間となっていた。
しかし、それだけでは物足りなくもなってくる。居たたまれなくなり、家を出て向かうのは加代子さんの営むお店の前。
店が閉まっていようが、彼には関係はない。彼女のそばに居られるだけで、歪んだ彼の心は満たされていくのだ。
一晩中、停まっていた日もある。運転席に隠れ、自らの手で慰めたりもした。加代子さんの存在自体が、彼にとってはエロスなのです。
僕と加代子さんの仲をいち早く知ったのは、近所に住む吉川さんではない。彼が最初だと言えた。
朝早くに彼女のお店から出てくる若者を見て、身を屈めて隠れていたのだ。『なんや、アイツは?』、分かっていても理解はしたくない。
それは更に『加代が俺を裏切っているっ!』と彼の心を歪ませていくのです。
それは予定にない信哉の訪問だった。1ヶ月に二度現れるなど、これまでにはなかったこと。
少し不審がった加代子さんだったが、これまで通りの対応を見せている。そんな彼は、お茶を出し掛けた彼女にあるものを手渡していた。
『加代さん、これ。』と言って手渡されたのは、手帳から破り取ったようなメモ。そこには、びっしりと文字が書かれていて、書き出しはこうだった。。
『加代さんへ。言葉では恥ずかしいので、お手紙としてお伝えを致します。』
『なぁ~に~?』と笑顔で受け取った彼女だったが、その書き出しに異変を感じ、その笑顔はすぐに引いてしまう。
更に読めば、『僕はあなたが好きです!愛しています!出来るならば、あなたとお付き合いがしたいです!』と子供染みた文章のラブレターだった。
それは長々と続き、最後はこう締められていました。
『僕は46歳でニートをしていますが、あんな訳の分からないような子供には絶対に負けません!』
加代子さんの顔からは、血の気が引いていました。こんなヤツに告白をされたからではなく、こんなヤツに秘密を知られてしまっていたからでした。
『信哉くん、なによこれ~?冗談でなかったら、私怒るわよ~?』と言った彼女。あくまで内容には触れず、その行為自体を否定します。
『加代さん、俺、本気ですよ?あなたを愛してるんです!あんな子供より絶対!』、答えた信哉は、あえて彼氏の存在を口にしました。
『困る~、困る~。信哉くん、よく考えて?あなたが言ってるのは、従姉なのよ?分かってるの?』と問い詰めた彼女。
しかし、おとなしかったはずの信哉が突然、『従姉弟やって、結婚出来るわぁ~!お前、バカにするなよぉ~!!』とキレてしまうのです。
それは、心配をしていた彼の姿。親である叔父夫婦でさえ手がつけられない暴れん坊。それは、親戚の間でも有名な話でした。
46歳にもなって、自分自身を制御することも出来ない人間なのです。
『信哉くん、もう帰ってくれる?私、お話をすることはないから~。』となだめて帰らせようとする加代子さん。
しかし、導火線に火のついた彼はもう聞く耳を持ちません。鼻息も荒く、表情も一変をしてしまっています。
そしてついに、『なぁ~?犯らせてくれや~?俺が童貞だって、お前ら親戚みんな知ってるんだろ?!なら、お前が責任もって教えろや!』と大爆発をしてしまうのでした。
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