『ナオミチちゃん、今度の日曜日って、忙しい?』、控えめにそう聞いてきたのはおばさんだった。
彼女の方からそんなことを言って来ること自体初めてで、僕は考えることもなく、『全然~、何にもないよ~。』と即答をしていました。
『なら、お願いしようかしら?』とだけ言われて、向かったおばさんの家。リビングへと入ると、なぜ僕が呼ばれたのかが分かる。
テーブルの上には、明らかに中身はケーキだと分かる箱。それを見て、『いつ?』と聞いてみました。
おばさんからの返事は『本当は、明日。』、今月中だとは知ってしましたが、日にちまでは知りませんでした。
僕よりも少しだけ早生まれの川田くん。迎えることは出来ませんでしたが、26回目のバースディのようです。
もちろん、バースディソングなんかはなく、熱いコーヒーが出され、ケーキにはナイフが入れられます。
切ったケーキをお皿に乗せると、おばさんはそれを仏壇へと運びます。きっと、これがしたかったのです。
おばさんは、しばらく帰っては来ませんでした。きっと、息子の誕生日をひっそりと祝ってあげているのでしょう。
しばらくして、彼女が戻って来ました。『あ~、ナオミチちゃん、食べて食べて。』と手をつけてない僕を見てそう言います。
更に気を使ったのか、『おばちゃんも食べるから。』とケーキを切り分け、自分の前へと置きます。ようやく、いつもの僕とおばさんに戻るのです。
おばさんは、どこか嬉しそうでした。僕のために無理をしているのかも知れません。なので、僕も明るく振る舞います。
ケーキが食べ終わる頃、『ありがとうねぇ。』と言われました。てっきり、誕生パーティーに来てくれたことへのお礼だと思いました。
しかし、違っていました。『おばちゃんが笑っていられるのは、ナオミチちゃんのおかげ…。ありがとう…。』と言ってくれるのです。
それには、少しビックリしました。言われたからではなく、こんなことを言うような方ではないと思っていたからです。
『なにを言ってるんよ~。やめてよ~。』と照れて言うと、『お礼だけ、お礼だけ言わせて。』と言っていました。
ケーキも食べ終わり、僕はソファーへと座ります。おばさんも片付けを始めていますが、僕にはどうしてもさっきの言葉が気になってしまってたまりません。
そこで、『お礼をしてくれるんなら、僕とデートでもしてよ?』と頼んでみます。おばさんの口からはすぐに、『ええぇ~?私とぉ~?』と大きな声が出ます。
しかし、振り向いた顔は飽きれながらも笑っており、『これは、うまく口説けばいけるかも。』と僕は判断をします。
『決まり、決まり!来週、いくよ!決めたよ!』と大袈裟にはしゃぐ僕を見て、おばさんの口からは『嫌っ!』とは出ませんでした。
※元投稿はこちら >>