寝室へ入ると、『ナオミチちゃん、ちょっと待ってくれる?』と言われ、彼女は先にベッドへと向かった。布団がめくれていて、起きたままの状態らしい。
枕を置き直し、シーツは彼女の手で丁寧に払われていく。見られて恥ずかしいものも、きっと床へと払われたはずた。
軽い掃除が終わると、『はい、どうぞ。』と言って、僕を先に入れようとします。
ベッドに横になった僕だが、加代子さんは入っては来ない。手には手鏡とクシ、僕に背を向けながら、乱れた髪をもう一度セットをしています。
そんな彼女に、『ねぇ?おばさん、モテたやろ~?』と聞いてみます。川田くんの話をすることはあっても、彼女自身のことを聞いたことはありません。
『私がぁ~?やめてよぉ~。私がモテるはずないでしょ~。』と照れくさそうに言っています。
『えっ?なんでぇ~?美人やん。』と言いますが、これも逆効果でした。本人は認めてはないようです。
手鏡を覗く加代子さんの目が、不意に後ろを向きます。そこには、僕が立っていました。一緒に鏡を覗き込み、僕の指がそっと眉へとあてられます。
『これぇ~!』と押した彼女の眉毛。それは黒くてとても太く、おばさんの顔の中でも一番のトレードマークだと思われます。
『この眉毛、最高でしょ?』と言うと、『もうやめてやめて…。恥ずかしい恥ずかしい…。』と顔を赤らめました。マジマジと見られることに慣れてないのです。
そして僕の指は、美人な目、大きめの耳、左右対称の鼻へと降りていき、最後は厚い唇。誉めながら分かったことは、やはり美人だと言うことでした。
『もおぉ~~、こんなおばさんをからかわないのぉ~。』とベタ褒めに真っ赤な顔してしまった彼女。
そんな彼女の頬に、『愛してるよ。』と軽く口づけをします。鏡越しに見る彼女の顔は、嬉しそうに笑っていました。
『さぁ~、ベッド行こ?ベッド~。』と誘った僕でしたが、加代子さんはここでも動いてはくれませんでした。
僕がベッドに入るのを確認をすると、洋服ダンスの方へと向かい、中から新しい下着を取り出すのです。長く履いている下着を気にしたのでしょう。
身を屈めながら全裸になり、素早くその下着を身に付けていきます。女性の着替える姿は、いつ見ても得をした気分となります。男の性でしょうか。
そして、振り向いてこっちへと向かってくる彼女を見て、僕は『おおぉ~。』と思ってしまいました。
グレー系のお揃いのブラジャーとパンティー。柄が入っていて、もちろんその柄が大事な部分を隠してはいます。
しかし、生地は薄く、そこ以外の肌がほとんど露出をしてしまっていて、真面目な彼女には似つかわないセクシーなものでした。
『うわぁ~、なにそれぇ~?エッチやなぁ~?そんなの持ってたのぉ~?』とオーバーに聞いてあげた僕。そう、聞いてあげたのです。
照れ屋のおばさんには、そうやっておどけてあげることが一番いいのだと分かっています。
加代子さんは軽く胸に手をあて、何も言わないままにベッドへと入って来ます。
その顔は照れくさそうにもしていますが、僕の言葉に内心、『してやったり。』と思っているのかも知れません。彼女が初めて見せた、いたずら心でした。
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