四十九日も終わり、この家の仏壇の前からは彼の骨壺は消えていた。お父さんと同じお墓へと入ったのです。
そして、僕が彼の遺影の前に座るのも今日が6回目。おばさんはリビングにいて、僕が出てくるのを待ってくれています。お互いに、もう慣れたものなのです。
しかし、この頃になるとおばさんの方に変化がありました。それは服装。外出向けのワンピースではなく、ラフな部屋着で迎えてくれるようになっていました。
そして、話をする内容からも彼の話は段々と無くなっていき、代わりに世間話へと変わってしまいます。
もう、どこか話の合う仲間感覚なのです。
時間も30分で帰ることはなくなり、1時間以上は当たり前。長いと2時間近くにもなります。年が離れているのに、気が合ったんですね。
そして、見えてきたおばさんの素顔。コーヒーを飲み、そこにはお菓子。ため息も出るし、くしゃみもします。
『淑やか。』だと思っていた僕は、そんなことなどしない女性だとどこか勘違いをしていました。熱いお茶派だと勝手に思っていたのです。
そのせいでしょうか、ここに居ることがとても心地よく感じるのです。
そんな彼女が頬杖をつきます。次第に目が遠くなり、そして閉じ始めました。疲れているのでしょう、お客の僕がいるのにです。
おばさんには申し訳ありませんが、その姿を僕の目は凝視してしまいます。それは5分以上も続きました。
髪の毛の量、僅かに緩んだ首元から見える肌、隠れた胸元とお腹、そして、スカートから生えている脛と足首。普段ではこんなに観察など出来ません。
そして、すぐに目が開きます。おばさんは寝てしまったことに気づき、慌てて僕の方を見ます。もちろん、目が合いました。
『ごめんなさい。おばちゃん寝てたでしょ、今。』と聞いて来ますが、『寝てたねぇ。顔、ずぅ~と見てたわ。』と言ってあげます。
『まあ。』と言って微笑んだ彼女。さすがに照れくさそうな顔に変わります。それは、寝てしまったからでしょうか、寝顔を見られていたからでしょうか。
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