『なあ?川田くんのところ、何回も行ったら、ジャマだよなぁ~?』、そう母に聞いたのは、土曜日の朝でした。
母は、『いいんじゃない?川田くん、喜ぶと思うよ。』とは言ってくれましたが、伺ったのは6日前の日曜日です。
三年半もほとんど会ってなかった僕が、こうも頻繁に行ったりしたら、『おばさんに変に思われないか?』とも考えてもしまいます。
ただ、どうしてもおばさんの笑みが忘れられなかった。父からの電話がなければ、彼のことをもっと話すことが出来たと後悔もあったのです。
結構、僕はまた彼の写真の前で座っていました。『ちょっとだけ、二人にさせてもらます?』と頼むと、おばさんは『はいはい。』と席を外してくれます。
実は、それも知りたかったこと。先日訪れた時に、彼の遺影を見て、目頭が熱くなった自分に少し驚いたのです。
『まさか、自分が?』と、それも確かめたくて、ここへ来たのです。結果は、涙は出ました。三年半会ってなかったのに、多くの思い出は残っていたようです。
母の持たせてくれた、小さなタオル。使うことになるのを、母は分かっていたのかも知れません。
タオルで目頭を押さえているところを、後から入って来たおばさんに見られました。
慌てて隠そうとしましたがもう無駄のようで、『ダメやねぇ?写真見てたら、涙が出て来たわ。』と素直に白状をします。
おばさんは『ありがとうねぇ。』と言って、持ってきたお茶をテーブルに置きますが、途端に手は自分の目を押さえました。
少し、もらい泣きをしてしまったようです。
おばさんとテーブルを挟み、本題である彼との思い出話を始めます。
子供の頃に有刺鉄線で同じように太股にケガをしたこと。
中学の頃に、お互いの好きだった同級生を言い合ったこと。
高校の時には携帯が持てず、考えた僕たちはトランシーバーを購入して、毎晩お互いの部屋から交信をしていたこと。
自分の息子の知らなかった話を、『ええっ~?』、『ほんとに~?』と嬉しそうに聞いてくれるおばさん。
それを見ていると、話をしているこっちまで何か嬉しくなってしまいます。
そんな話しも、そろそろ尽き掛けます。話し始めてから1時間以上、途切れる時間も出始めました。
すると、今度はおはさんの方から話をしてくれるのです。それはおばさんの目から見ていた、僕たち二人のこと。
普段は物静かなおばさんが、一生懸命に自分から口を開いてくれます。僕の思い出話で、おばさんも高揚してしまったのでしょう。
そんなおばさんを見て、僕も嬉しくなるのです。
おばさんの話は長くは続きませんでした。しかし、目を合わせている僕には、とても長く感じます。
こんなにおばさんと眼を合わせた事はなかったからです。『完全に目が合ってるぞ。』と思いながらも、失礼になると思い、避けられないのです。
おばさんは綺麗でした。昔から気がついてはいましたが、こんなに顔を合わせたことで更にそれを実感をします。
どこがどうではありません。普通に美人顔なのです。
翌朝。目が覚めると、時間は6時45分。起きるまでには、まだ15分あります。若い僕の身体は、寝起きでもソコだけは元気です。
朝勃ちをしたソレを握り締めると、次第に手は動き始めます。そして、目の前に浮かぶのは川田くんのお母さんの顔、そしてあのまなざし。
太いまゆ毛は歪み、厚い唇は開き、細い首すじが伸びます。
そして、心がおばさんで満たされた時、僕の身体は真っ白な液体を放出していました。
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