加代子さんが家を出たのは、午後6時を回っていました。気乗りのしない彼女は、僅か数軒隣の吉川さんの家へと向かいます。
家の前には大きな赤いバイク。タイヤに擦れてスカートを汚したくはない彼女は、体勢を崩しながら、それを避ける必要がありました。
玄関に立ち、押された呼び鈴。すぐに奈美が現れます。
『どうも、すいません。来ていただいて…。』
そう言って丁寧に頭をさげる奈美を見ると、気乗りのしなかった加代子さんの気持ちも少しだけ和らぐのでした。
家の中へと入った加代子さん。目の前には、大きなライダースーツが掛けられていました。さっき帰っていたばかりの奈美が脱いだものだと分かります。
言いはしませんが、こんな服を着て会社へと向かう彼女を、加代子さんも理解は出来ないのです。
『お祖母さん、どう?』
加代子さんが聞くと、『大丈夫ですっ!もうすぐ退院出来ると想います!』と返した彼女。
しかし、親族でもない加代子さんには本当のところは分かりません。分からないから、今日ここに来ることを引き受けたのですから。
家へとあがった加代子さん。早速、本題へと入ろうとしますが、帰っていたばかりの奈美の方に準備は出来てないらしく、彼女は少し待つことになります。
慌ただしく家の中を走り回る彼女を見て、『ゆっくりでいいよぉ~。おばちゃん、全然急いでないから~。』と優しい声まで掛けてあげるのでした。
普段着に着替えた奈美が現れます。手には熱いお茶が持たれていて、馴れない手つきで加代子さんの前へと出されました。
その姿を見て、『かわいい…。』と思ってしまう彼女。きっと、子供のように見えていたのでしょう。長居になることを快く受け入れるのでした。
『すいません。こっちなんです…。』
そう言って、奈美が見せたのは隣の部屋でした。そこには適度にまとめられたゴミ(?)が集められています。
それは加代子さんが『姉さん。』と言って慕う、吉川さんの品。加代子さんは、その分別を奈美に頼まれたのでした。
それは遺品整理とも取れ、加代子さんが気乗りをしなかった理由なのです。
まとめられた袋を開けて中を覗き込むと、そのほとんどが焼却が出来そうな紙切ればかり。分別と言っても、たいした時間は掛かりそうにもありません。
予想通り、加代子さんの仕事はすぐに終わります。袋には、言われたままを奈美がマジックで書いて行っています。
そして、一息ついた頃、『おばさん、これもついでにいいですかぁ~?』と奈美が言ってきました。それは、そう大きくはない段ボールの箱。
加代子さんも快く、『いいよー。』と言って
その箱を開くのでした。
その瞬間、加代子さんは自分の位置関係を把握しようとしていました。部屋の扉の位置、玄関までの距離、それを瞬時に見極める必要があったからです。
玄関までの距離は分かりました。しかし、そこへと辿り着くため方角は、すでに奈美の大きな身体があるのです。
加代子さんの手で取り出された数枚の紙。それはすぐに段ボール箱の中へと落ちていきます。見てはいけないものだったからです。
午後7時。僕はラインで加代子さんに帰るコールをしています。しかし、それが『既読』になることはありません。
その時、彼女のスマホはその手にはなく、奈美の足に蹴られて部屋の隅にまで転がっていたからです。
段ボールの中へと落ちていった紙切れ。そこには、二人の女性の顔が写っていました。一人は、加代子さんも知らない若い女性。
そして、その背後に写っていたのは、全裸の奈美でした。乳房のないその身体は、まさに男性の身体。
前に屈んでいる女の子のよがっていて、後ろの奈美が何をしているのかは、一目で分かりました。女が、女を犯していたのです。
※元投稿はこちら >>