僕が出勤のため、家を出る午前7時30分。今日もまた、吉川さんの家からは、白と赤のつなぎを着た女性が、自慢の真っ赤な400CCのバイクを押して現れる。
フロントやボディーはカスタムされており、バイクに興味のない僕でさえ、『あれ、格好いいなぁ~。』と思ってしまうほど。
バイクに股がり、エンジンが掛かると、フルフェイスで顔を隠した女性が颯爽と走り始める。大柄な彼女ですから、とても映えて見えるのです。
そんな彼女を見て、『おっ!V3、今日も頑張ってるな。』と言って、僕は一人でほくそ笑むのでした。
しかしまあ、あれで普通のOLをしているというのですから、毎日あんな格好で現れる彼女を会社の方たちはどんな思いで見ているのでしょうか。
『吉川さん、少し体調を崩されて…。』
加代子さんから、そんな話を聞かされたのは、数日後のこと。あの元気だった吉川のおばさんも、病には手を焼いているらしい。
それと時を同じくして現れたのが、孫の奈美さんでした。おそらく、お祖母さんの世話も兼ねて、あの家にやって来たのでしょう。
なので、吉川さん家の狭いスペースに、毎日あの真っ赤なバイクが窮屈そうに停められているのです。
『格好いいですねぇ、それぇ~。』
思わず彼女に声を掛けてしまった僕。バイクに興味はない、彼女にも興味はない。
ただ、家の前を通り過ぎようとして、偶然振り向いた彼女と目が合ってしまったのだ。黙って通り過ぎる訳にも行かず、だから『思わず。』でした。
彼女の手には、水道のホースが握られていました。その場でしゃがみ込み、朝から愛車を洗っていたのです。
腰を上げた彼女は、右手の甲で一度鼻をこすり、笑顔で『ありがとう…。』と言って来ました。やはり、お気に入りのようです。
しかし、僕がその場に長居することはありません。バイクを熱く語り始めた彼女に、知識のない僕はちんぷんかんぷんとなり、さっさと逃げたのです。
僕が居なくなるとまたしゃがみ込み、背を向けてバイクに水を掛け始めた彼女。広い背中、厚い胸板、太股も大きく、まるでおっさんのような体型です。
『川田さん、雰囲気変わった~?ちょっと、痩せた~?』
それは、前回の町内ゴミ拾いの時に聞かれた、近所のおばさん数人の声。加代子さんは笑って否定をしていたが、おばさん達のその分析は間違いではない。
中年太りだった身体は締まり、その腰にも足首にも女性らしいキュッとしたくびれが出来てもいます。
そのためでしょうか。地味目の服を選ぶのは変わりませんが、昔に比べればそこに1色2色多く足された服を選んでもいるようです。
それに、おばさん連中には言えませんが、夜になれば彼女は…。
『カチャ…。』
寝室の扉が音を立てた。加代子さんは準備に時間が掛かったのか、ようやく待ちくたびれた僕の前へと姿を現しました。
しかし、彼女はその場に立ち尽くすと、僕の言葉を待ちます。何かを言ってもらわなければ、照れくさくて動けないのです。
見れば、顔は曇り、組んだ両手は股間にあてられたままピクリともしません。今の彼女は、恥ずかしくて仕方がないのです。
『その手、どけてよ…。顔上げて、こっち見なよ…。』
掛けられた僕の言葉より、彼女はようやく動くことが出来るのです。先に、股間で組まれていた両手のロックが外れていきます。
左右に分かれた手は、腰の辺りで止まりました。彼女が隠そうとしていたもの。それは、陰毛まで透けてしまっている薄い下着。
カールをされたその毛、一本一本がはっきりと写し出されています。
そして、上がっていくアゴ。それは定位置で止まりました。そこで加代子さんは僕に向かって笑顔を作りますが、その笑顔からは硬さしか見えません。
僕の目の前でこちらを向き、指示を待つ彼女。寒いのか恥ずかしのか、足は僅かに組まれました。
上からなにか羽織られているはずなのに、ブラジャーは胸元を隠せず、パンティーも陰毛を隠せてはいません。
彼女が羽織っているのは、薄く透けたキャミソール。今の彼女は着ているものが全て透けてしまっているため、照れくさくて仕方がないのです。
そして、その色は全身が赤色。僕の希望だったとは言え、60歳を過ぎた加代子さんにとって、それはかなり無理をしたものでした。
その夜、この部屋にも、もう一人のV3がいました。
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