『ハァぁ~~。』
長椅子に座る彼が身体を震わせ、小さくそんな声を出した。『トイレ?そこー。』、すかさず母はそう答える。
彼の尿意を感じているのを知り、事務所の隅にある個室のトイレを使わせてあげるのだ。このトイレを使うのは、事務所とフロントで働く人のみ。
つまり、水本さんは初めて使うこととなる。距離が近いため、男性が使用しているだけで、やはり女の母は気になってしまうのです。
すると、
『松下さん、ごめーん!トイレットペーパーあるー?』
と中から彼が聞いて来ます。『確か、まだあったはず。』と思った母も、『そこにないー?予備なら、後ろのたなー!』と声を掛けます。
『はーい!』と返事があり、安心した母だったが、それからもなかなか彼が出てこない。『何かあったー!?』とも声を掛けるが、扉は開かない。
少し心配になった母は、『開けるよー?』と声を掛ける。この奥には小さな洗面所があり、トイレはその奥。もう一枚、扉があるのだ。
母は気にせず開けてしまった。そこには奥の扉を開いたまま、パンツを引き上げようとする彼の姿があった。
残念ながら、慌てて目を背けた母も彼の男性器を見てしまうのです。それは、明らかに大きなモノだった。
母がこれまで何人の男と関係を持って来たのかは知らないが、その中でもきっと一番だと思われる。
そして、細すぎる彼の貧弱な身体に垂れ下がっていると言うのが、余計にそれを強調させてしまうのです。
『すいません。』
『ごめんなさい。』
トイレから出て来た彼、そして母が謝ったのはほぼ同時。お互いに、申し訳ないことをしたと反省をしたのです。
ただ、片方にはその気はありません。『パニックを装い、狙った獲物に自慢のモノを見せつける。』、その計画は見事に実行されたのですから。
母は、気まずくなりかけていました。トイレを開けてしまったことにではなく、『冴えない。』と思っていた彼が、あんなに大きなモノを持っていた。
そのギャップが、頭を混乱させてしまいます。『もう、帰って欲しい。』、そう思うほどに。
しかし、この水本は巧みでした。母の性格をちゃんと見抜いています。『すいません。見られちゃいましたか?』、照れくさそうな笑顔で母に聞きます。
この照れくさそうな笑顔こそが、姉さん肌の母には好物なのを彼は知っていました。
『見た見た!どうせだから、全部見てやったわー!』
そうふざけて答える母ですが、もう彼のトラップに捕まり始めているのです。
『見られましたかぁー…。恥ずかしいですよー…。』
『何がよー!大きなモノ、下げてるじゃないのー!』
『えっ?大きい方ですか?僕って…。』
『大きいと思うよー!…、知らんけど…。』
『松下さんが見た中でも、大きい方ですかー?』
『一番じゃないー?アハハ…、私、何を言わせれてるんだろー…。』
彼が下ネタ言えば、知らず知らずに母は乗せられてその上を言ってしまいます。完全に母の性格を熟知した、彼の作戦でした。
この日、母の中に1つのことが刻まれました。それは、水本と言うを男性の事。母の53年の人生の中で、『チンポを見たことのある男。』への仲間入りです。
もちろん、その全ての男性と関係を持った訳ではありません。ただ、これから先、この男性を心のどこかで意識をしてしまうのは間違いありません。
更にこの日、一人の女性が彼に捨てられました。別れ方も『結婚しようと思う人が出来ました。』と告げられてしまい、家庭を持つ女性は引くしかありません。
浮気だったからです。彼に身体をあずけ、その大きなモノを何度もその身体で受けました。吐き出されていく精液も、全て身体の中へです。
別れた彼女は、あの時のことを思い出していました。彼のこの声が二人の始まりだったからです。
『安藤さーん、ごめーん!トイレットペーパーあるー?』
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