『冴えない男…。』
それが母の第一印象でした。フロントに座る母の後ろで、また出来の悪い主任の面接が行われている。
名前は『水本』、年齢は35歳。主任さんには悪いが、母は彼の履歴書を先に覗き見をさせてもらっていた。
そして、初めて見た彼。顔も冴えない、身体はガリガリの痩せ型、力仕事もいるこの仕事が出きるのか?
彼のシフトは、金~日曜日までの夜勤のみ。前にいたあの少年とは大差がない。
夜勤の清掃は通常2人作業となる。おばさんとは言え、男女のセットとなるが、これは致し方がない。お互いのモラルと言うものを信じよう。
しかし、数ヶ月後に聞こえて来たのは、ある清掃員との噂。おばさん連中では、そんな噂が広まってしまうのは、これまた致し方がないことなのだ
その相手とは、『安藤さん』と言う清掃員。来年59歳となるが、このホテルでは唯一の美形と言えた。見る人が見れば、ホステス風と言うかも知れない。
そんな噂が広がったが、母は気にはしなかった。『男と女、一緒にいればこんなことは起こり得ること。』、そう理解をしていたのです。
ただ、それは本心だったのだろうか…?
例の噂で、彼と安藤さんを組ませることは、ほぼ無くなった。人数的にも、ゼロと言うことが出来ないのが、このホテルの苦しいところ。
それに、お互いに『違います!』と言っている。ならば、それを信じるしかありません。
その日の夜は、母の当直日。金曜日でもあり、そしてどうしても組ましたくはない、あの噂のコンビが清掃を始めている。
気にするつもりもないが、事務所に座る母の目は自然と監視カメラのモニターを覗いてしまう。カメラで見る限りだが、2人には何もありそうもない。
時計が深夜12時を回ります。清掃も、残り1時間です。粗方、部屋の清掃が片付いた2人は、事務所へと現れました。
『もう少し時間あるから、セット作ります。』、そう言って、事務所の奥で山になっているタオルやシーツを台車に乗せ、作業員の休憩所へと向かうのです。
残念ながら、そこにはカメラは向けられてはいません。彼らがそれを知っているのかどうかは分かりませんが、母もこの時だけは不安を感じるのです。
30分後、母はその休憩所の前を通り過ぎています。聞こえてきたのは、二人が笑って話をしている声。とても、やましい行為を行っているとは思えません。
帰って見てみれば、セットもほとんど完成をしています。彼らは、ちゃんと仕事をしていたのです。
事務所へと戻った母。カギを掛けた扉を開こうとした瞬間、ある男性に声を掛けられて少し驚きます。帰ったと思われていた、水本さんでした。
『あれー?帰ったんじゃなかったのー?』
不思議そうに聞いた母でしたが、『タイムカード…。』と小さく答えられ、彼が押し忘れたのだと分かりました。
しかし、母の記憶では、『確か、彼は押していた。』と残ってはいるのですが。
事務所が開けられ、彼はタイムカードのシートを持ち上げます。しかし、それが入れられることはなく、こんな話を始めます。
『松下さん?今、どちらに行ってました?休憩所ー?僕と安藤さんって、やっぱり疑われてますー?』
母の中に衝撃が走りました。2人の仲をどうこうではなく、『たった今、休憩所に行って来た。』という事実を見抜かれたからです。
『私には関係ないー!男と女でしょー?そんなことまで知らんよー!…、』
『そうですか…。』、入口に立ったまま、彼は母を見ていました。ガリガリのその姿ては、見られる母は何も感じません。
『ほんと、ほんと安藤さんとは何でもないんですよ…。出来れば、松下さんも力になってください。僕はいいですが、あちらが迷惑でしょうから。』
それは、彼の本心に見えた。冴えない男だが、いまの言葉には嘘はないとさえ感じる。
『知ってるわよぉー!、気にしない!、私にはちゃんと分かっているからねぇー。』
彼を見ることはなかったが、母はそう言って声を掛けている。この男にも、あの安藤とか言う女にも興味はない。
ただ、彼が言った『力になってください。』は、姉さん肌の母の心には染みてしまったのです。
『ちゃんと、力にでも何にでもなってあげるわー!頑張りー!』
気持ちの乗った母は、そう言って帰る彼に声を掛けてあげたのです。
1時間後の深夜2時過ぎ。ある2人のカップルが身体を繋げながら、こんな言葉で盛り上がっています。
『松下のおばはん、力になりまーす!頑張れー!やって。アハハハ…。』、せっかくの母の言葉も不意にして、笑っていたのです。
笑っていた女性でしたが、後ろから貫いているモノを男がまた押し込んだため、顔が歪みます。
そして、派手なパーマの髪に後ろから男の細い手が掛かると、女の顔を強く枕へと押し込みました。
男は完全に女の背中へと乗り掛かると、その身体とは不釣り合いな大きなチンポで女を責め立てるのです。
ホステスあがりのこの女には、ある程度の男のモノには対応が出来ました。しかし、このドSっぷりには舌を巻いてしまいます。
『もぉー!水本くん、あんたの大きいの分かったから、無茶せんとってよー!』
そう枕へ向かって叫ぶのは、あの安藤さんでした。
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