廊下に響く、僕の声。しかし、それは加代子さんの考えていたものとは少し違っていたようです。
彼女は両手で僕の右腕を掴み、『違うからっ!』と言って僕を制します。
『私たち、ケンカをしに来たんじゃないのっ!』
その言葉に、高まり掛けた僕の気持ちも落ち着き始めるのです。
『大野さん?おじゃまをさせてもらってもいい?』
ラブホテルの客室だというのに、加代子さんはとても丁寧に言葉を掛ける。大野は、『ああ、どうぞ。』と言って、僕たちを招き入れてくれます。
彼は、ベッドに腰を降ろします。着ているものがバスローブだけなので、一瞬股間が見えてしまいましたが、さすがにそれは隠しました。
僕と加代子さんは、並んでソファーに座ります。そんな僕たちを見て、大野が声を掛けて来ます。
『もしかして、その子…、川田さんのコレ?』
親指を立て、彼女に問うのです。
『はい。私が今、お付き合いをさせてもらっている方です。』
彼女はゆっくりと丁寧に、彼に伝えました。
『なんとぉ~!いくつよぉ~?』
それが彼の返事。自分自身が『熟女好き』との自覚のある彼ですが、他人の事となればそんな気持ちにもなうようです。
『川田さん、男、いたんやねぇ~?おらんのかと思ってたわぁ~!勘弁な、勘弁!』
ニヤケ顔となり、罰悪そうにように話す大野。そんな謝罪でも、加代子さんは1つの納得はしたようだった。彼女の目的は果たされたことになる。
しかし、僕にはガマンが出来ないことがあった。それは、彼女を侮辱しているもしか思えない彼の行動でした。
『あなた、女性を誘ったんでしょ~?ここに~?本気~?』
それは、僕のこの一言から始まる。
山のようにゴミ箱に捨てられたティッシュ。その上に隠すことなく乗ってある使用済みのコンドーム。
部屋は精液の臭いにまみれ、ベッドの下には女性が脱ぎ捨てた派手なパンティーが落ちている。さらにその奥には、ビリビリに破かれたストッキングまで。
彼はこんな部屋に、女性を誘ったのだ。それも、僕の加代子さんを…。
『お前、最低やなぁ~!ええか?二度と俺の女にちょっかい出すなっ!分かったか!』
彼は、それでも顔色1つ変えなかった。彼にとっては、これは当たり前の行為なのだ。
僕たちがホテルを去り、彼はフロントで揉めることとなる。それは支払う料金の問題だった。
『三人様でご使用されましたよねぇ~?』、フロントにそう言われるなか、必死で抵抗を見せていたのです。
以後、彼が加代子さんのお店を訪れることは無くなった。加代子さんを諦めたと言うより、ある女性を見つけたからだった。
それは近所に住む未亡人。偶然を装って出会い、4日後には自分のモノにしていたと言うのだから、何も変わってない。
その女性は加代子さんのようにおとなしく淑やかで、顔も美人と言える。しかしまあ、78歳のお婆さんにまで手を延ばすとは、たいした熟女キラーである。
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