アルバムから手を離した加代子さん。代わりに僕がページをめくっていきます。最初はただイスに腰掛けている写真だったはず。
しかし、ページが進むにつれ、その写真は過激なモノへと変わっていきます。自ら女性器を大きく広げ、その中にはオモチャが突き入れられてたりもします。
更に後半になればモノクロからカラー写真へと変わり、芸術とかではなく、それはただの辱しめを受けるだけのものとなっていくのです。
加代子さんはタンスへと手を延ばし、また新しいアルバムを取り出し始めていました。それは10冊では収まらず、その倍はあろうかという数。
彼女は何年も掛けて、この部屋で旦那さんに裸体を撮られ続けていたのです。
出されたアルバムを次々とめくる僕に言葉はありません。『どういう気持ちで僕に見せたのだろう?』と、差し出す彼女の気持ちばかりを考えてしまいます。
『これも見て?』
そう言って、また新しいアルバムがテーブルの上に置かれました。表紙をめくろうとした僕に、『それがあの人…。』と加代子さんが小さく声を掛けます。
そして、めくられた1ページ目。知らない女性の全裸写真でした。加代子さんと同じように、イスに座って撮られていました。
その顔をじっと見て、僕の中の微かな記憶が呼び起こされていきます。その女性の顔を知らないのではなく、忘れてしまっていたのです。
『これ、川田のお祖母さん?…、』
写真を見ながら、僕はそう口にしていました。しかし、加代子さんからの返事はなく、彼女の方を見ました。
彼女は既にこちらを向いていました。そして、その目が『そうよ。』と言っています。愕然としました。いや、もしかすると少し興奮をしたかも知れません。
旦那さんは加代子さんだけではなく、実の母親のヌード写真はまでこの部屋で撮影をしていたのです。
そのお祖母さんの顔はとても若く、きっと加代子さんと結婚をする前から、二人で撮り合っていたようです。
加代子さんには申し訳ありませんが、僕にはお祖母さんの写真の方が興奮出来ました。加代子さんよりも全然ソフトな写真なのにです。
実の母親の裸を撮る息子、そのシチュエーションだけでも高揚してしまいます。
『もしかして、おじさんって、お祖母さんと関係があったりする?…、』
そう聞いた僕でしたが、加代子さんはそれはきっぱりと否定をしました。そんな犬畜生のような関係にはなかったと言います。
テーブルの上には25冊近いアルバム、そして入りきらなかった200枚程度の写真が置かれました。そのほとんどがデジカメで撮られたものです。
『これ、どうするの?』と聞いた僕に、彼女は『全部処分したい…。燃やしてしまいたい…。』と言います。
これだけの量です。手に負えない彼女は、ずっとここに置いておかざる得なかったのです。
彼女を苦しめ続けた写真は、人気のない山の中腹で一枚一枚黒い灰へと変わっていきます。
加代子さんの顔を見ると、『早く燃やして。』と言わんばかりでした。この写真には、旦那さんとのいい思い出などどこにもないのです。
山を降りていく車。写真は全て燃やしたのに、彼女に笑みはありません。長年、自分を苦しめた物がものがなくなり、余韻に浸っているのでしょうか。
そんな彼女に声を掛けることは出来ず、僕はただ山道の中をハンドルをきっていました。
隣に座る加代子さん。彼女が考えていたのは、僕への償いでした。こんなことに付き合わせたことにではありません。
僕に、1つだけウソをついていたからです。
それは数年前、旦那さんが亡くなった後、あの部屋で加代子さんが見つけていました。それを見た彼女は、その場に崩れ落ちたと言います。
その写真には、若き日の旦那さんとお義母さんが写っていました。二人の唇は、恋人同士のように重なっていたのです。
更にめくれば、彼は全裸となり、同じく全裸のお義母さんの上にいました。二人はカメラに笑顔を見せています。
笑う旦那さんの男性器は大きくなり、それはもう母親の中へと突き入れられています。そんな二人が笑ってこちらを見ているのです。
この先に現れるであろう、自分の嫁をあざ笑うかのように…。
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