『ナオちゃん?ちょっといいかしら?』
リビングのソファーでくつろいでいた僕に、加代子さんがそう声を掛けてきたのは、とある日曜日の午後でした。
僕は立ち上がり廊下へと出ます。右を向けばお風呂があり、仏壇の置いてある部屋、着替え部屋があります。彼女はそちらの方へと歩き出します。
カタカタとなるスリッパの音。しかし、その音は止まることはなく、更に奥にある謎の部屋の前まで来てしまうのです。
『ここは、なんの部屋~?』
そう聞いたのは、もう何ヵ月も前のこと。『あぁ~、ただの物置きよ~。』と答えた彼女だったが、その顔には影がありました。
何より、その扉には後付けをされたと思われる南京錠が掛けられており、その不気味さからか、それ以降は聞くことはなかったのです。
『ここ…、』
と言いながら、加代子さんの手はその南京錠へと掛けられました。手には小さなカギが持たれていて、初めてその扉が開くことになります。
南京錠が外され、ドアノブに手を掛けた彼女。しかし、すぐに回されることはなく、『出来るなら、あなたに手伝って欲しい…。』と言って来るのです。
『カチャ。』と扉が開かれ、彼女はすぐに照明のスイッチに手を延ばしました。明かりに照らされた部屋は長く使われてないため、少し不気味に見えました。
そんな僕を、彼女は先に部屋へと招き入れるのです。
夏の午後です、部屋はとても暑く感じます。後から入って来た加代子さんでしたが、その扉を閉じることはしません。
ドアノブを見れば、内側からカギが掛けられるようになっています。つまり、この家で唯一カギの掛けられるのがこの部屋なのです。
部屋の中を見渡しました。床には豪華な絨毯が敷かれ、奥には備え付けのベッドがあり、どちらも少しホコリにまみれています。
中央にはイスが1つポツンとあり、右には大きなタンスが置かれています。ただの物置き部屋とも思えず、『なんだここ?』と考えてもしまうのです。
立ち止まっている僕の隣を、加代子さんが通り過ぎて行きます。その彼女が手を延ばしたのは、タンスの引き出しでした。
引き出しは引かれ、中には何かの数枚の書類があるように僕には見えました。その紙が取り除かれると、その下からは厚い書籍が出て来るのです。
重そうな書籍を取り出そうとする彼女。僕も手を添えようとしますが、『大丈夫…。』と言って制止をされました。
抱えて出されたソレは、小さなテーブルの上へと置かれます。それを見た僕は、写真のアルバムであることを知るのです。
『誰かの写真~?』と軽く聞きましたが、彼女からすぐには返事はありません。その手も止まり、アルバムも閉じたままなのです。
『家族の写真?旦那さんの写真?もしかして、元彼とか?』、そのためらいは僕のためかと思っていました。
そのどれにしろ、僕には面白くはないはずですから。しかし、僕の想像をしたものとは違うものだったのです。
『あのねぇ、あなただからお見せします。あなたなら大丈夫だと思ったから、あなたなら力になってくれると思ったからです…。』
彼女に思い詰めたように言われ、軽く考えていた僕にも真面目スイッチが入ります。そのくらい、彼女に取っては大切な何かなのです。
そして、めくられた表紙…。
A4サイズのモノクロ写真でした。ベッドがあり、奥には窓。その隣には小さなイスに姿勢よく座り、カメラに向かって微笑む女性います。
部屋の造りから、その写真はこの部屋で撮られていて、イスに座る女性は若いですが、加代子さん本人に間違いありません。
そして、それは裸体写真でした。
僕に構うことなく、めくられていくアルバム。もちろん、加代子さんの口から何かが発せられることもなく、淡々とページはめくられて行きます。
座っていた彼女は立ち上がり、今度は背中を向けています。お尻は突き出され、僅かにヘアーまでが見えてしまっています。
更に進めば、イスの飢えで大きく足を広げる彼女の姿が。もちろん、女性器までもがハッキリと写し出されているのです。
『旦那さんと撮ったの?』、自分がどんな気持ちだったのかは分かりません。ただ、そう彼女に聞いていました。
『違いますっ!撮らされたのっ!』
加代子さんは、これだけはキッパリと否定をしました。身体を平気で晒し、笑顔を作っていても、『そうじゃない!』と言うのです。
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