【act 6 ~ ラスボス ~ 】
ここは地元駅。僕も加代子さんも、4日ぶりに見る景色だった。二泊三日の予定を、もう1日だけ延ばしてしまったのです。
彼女の旅行カバンは、また僕の車のトランクの中へと置かれ、彼女は一人、自宅の方へと歩いて戻って行く。楽しかった僕達の旅行もこれで終わるのです。
自宅へと戻った加代子さんは、お店に貼ってある紙を破っていました。そこには『3日間の臨時休業』が書かれていています。
それを見て、約束を破ってしまったお客さまに対して、申し訳なくも思うのでした。
4日ぶりの店内。出発前と何も変わってないはずなのに、そこがとても懐かしい気さえします。それほどこの旅行中、いろんなことを考えされられたのでした。
家の中へと入り、やはり見たのはキッチン。そこはちゃんと片付けられており、出掛ける前の自分を思い出すのです。
荷物を置き、ソファーへとなだれ込みました。疲れているのが自分でも分かります。ほんの少し仮眠を取ろうと、目を閉じた加代子さん。
まぶたの奥に浮かぶのは、亡くなった旦那さんや息子さんではなく、彼氏の姿でした。
こんな自宅にプロポーズをしてくれた彼氏。『何を言ってるのよ~!』と突っ返しましたが、本心は違ってもいました。
そして、セックスで何回も何回も愛してくれた彼氏。その内容も数も、60歳になる彼女にも経験がないほど。人生でこれ程乱れたことはありません。
それを思い出し、年甲斐もなくはしたないと言う罪悪感と、愛されてよかったという満足感が交錯をしてたのです。
その頃、僕は母親に『ただいま。』と告げていました。4日ぶりの息子の姿をいつものように出迎えますが、その顔からは安堵の表現が見て取れます。
母も僅かながら、心配をしていたようです。
『疲れたから寝るわ。』と言うと、『ああ。明日、町内の掃除。出てよ~?』と言われ、僕は自分の部屋へと戻るのでした。
午後10時。加代子さんは、寝室の隣の部屋にいました。そこは生前の旦那さんの部屋。今は少し間借りをして、彼女の着替えが置かれています。
ただ、それ以外はほとんど片付けられてもなく、亡くなる前の状態のまま残っていました。彼女は机の引き出しを開け、中のものを覗き込みます。
何回も何十回も開けては閉めた、この引き出し。引けばペンが一本、コロコロと転がることまで知っています。それが彼女には、どこか嬉しいのです。
部屋を見渡した加代子さんは、古いアルバムを取り出します。それは彼女のものではなく、幼少期からの旦那さんの姿が収められているもの。
彼女自身もほとんど見せられたことはなく、遺品の整理をしている時に、それは出て来ました。
普段からクールで真面目、彼女に対しても感謝の言葉などありません。その背中で感じとってくれという人でした。
彼女もそれが分かっているだけに、あえて要求をしたこともありません。
めくられていくアルバム。最後の数ページには写真は貼られてなく、ただそこには妻への感謝の言葉が残されているのです。
『妻・加代子へ。毎日の食事、感謝してます。毎日の家事、ご苦労様です。僕の子供を産んでくれて、本当にありがとう。
夜泣き息子は大変でしょう、本当は代わってもあげたい。今日も息子は元気でした、君のおかげです。』
その書体は全てバラバラ。つまり、旦那さんなりに妻への感謝の言葉を増やしていっていたのです。
この文章を見る度に、彼女も不器用だった旦那さんに感謝をするのでした。
アルバムを棚へと戻した加代子さん。なにげに自分用のタンスを開けていました。そこに仕舞われている、数々の下着。
彼女は手を延ばし、この中で一番セクシーだと思われる黒の下着を手に取ります。着ていたパジャマのボタンは外され、ゆっくりと全裸となっていく身体。
そして、見つめて考えていた下着は、身体を擦りながら身に付けていきます。
部屋の照明は消され、黒の下着姿のまま寝室へと向かう加代子さん。その手には、アルバムから抜き取った、旦那さんの写真が一枚握られています。
部屋へと入ると、その写真は枕の上へと置かれました。彼女は鏡の前と行き、いつもの夜間用の化粧を施します。
塗られていく保湿クリーム。肌はテカり、ゆっくりと染み込んでいきます。そして、その顔に口紅が薄く塗られていきます。
彼女は、まだ眠る気はないようです。
ベッドへと入った彼女は、一度その旦那さんの写真をテニス持って、その目にしっかりと焼き付けていました。
そして、その写真がまた枕の上へと置かれたると、布団の中の彼女の膝は折れ、新しく履いたパンティーに手が延びていきます。
左手はブラジャーの上から乳房を揉み、右手はパンティーの中へと入り、オマンコの刺激を始めています。
そして、彼女の口から出たのは、
『ナオ…、して…、もっとして…、』
という、写真とは別の男の名前。それは愛していた旦那さんに見守られながら、この男性を好きなった自分を見て欲しかったのだろう。
『私、この人をこんなに愛してるの~。だから、もうゆるしてください…。』、そう伝えたかったに違いありません。
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