丁寧に僕の前へと、顔を出してくれるおばさん。キスをするその顔からは、どこか余裕のようなものを感じる。
それでも、しおらしい雰囲気を醸し出しているのは、彼女が『自分』というキャラクターを守っているからだろうか。
お互いの身体が離れ、彼女は膝に手を置いたまま、一息をつく。小さく、『もぉ~…。』と言ったのは、僕にではなく、自分に言った言葉のだろう。
彼女は立ち上がると、『もう4時半やねぇ~?』と言ってくる。それは御開きの合図。いつも、彼女のこの言葉で僕は帰宅の準備を始めます。
抱き合い、キスまでしてしまった彼女。段階的にも、今日はここまで。『それ以上。』は求めないようです。
そんな雰囲気を出されてしまった僕は、『そろそろ帰ろうかぁ~。』と席を立つのでした。
玄関に行き、片足でケンケンをしながらシューズを履きます。後ろにはおばさんが立っていて、僕を見送ろうとしてくれています。
『よしっ!』と言って振り返った僕は、『好きなこと分かってくれた?』と聞いてみます。彼女は一瞬のためらい、『わかったから…。』と言ってくれました。
そして、『おばさんの中で、僕とセックスとか…、あり?』と聞くと、少し考え『考えておくから…。ちゃんと考えておくから…。』と答えてくれるのでした。
翌日から、僕は通常仕事となる。おばさんに会えるであろう週末には、まだ5日間も過ごす必要があった。
その間も何度か連絡を取り掛けたが、彼女の『考えておくから…。』という言葉がジャマをしてしまう。
断られるのが、怖いのだ。
金曜日の夜になり、僕のスマホはおばさんの家の固定電話を呼び出していた。
『もしもし?』と出た彼女の声を聞き、『おばさんと電話で話をするのは何年ぶりなんだろう?』とも思ってしまう。
そして、『ナオミチです。おばさん、よかったら明日の夜、遊びに行ってもいい?』と聞いてみます。
おばさんの返事は、『明日の夜~?ええ、いいわよ~。』でした。それは、ごく普通のトーン。
覚悟を決めたように電話を掛けた僕には、『えっ?』と思えるほどに、それはとても軽いものでした。
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