【act 4 ~ 自制 ~ 】
朝6時30分。リビングのソファーに座る僕が眺めていたのは、エプロン姿でキッチンに立つ加代子さんの後ろ姿だった。
視線に気づいている彼女だが、朝食を作るその手は止めない。更に面白いのは、彼女の目が一切こちらを見ないこと。その顔には、どこか照れたものを感じる。
ベッドの中とは言え、60歳の彼女が『愛していますっ!』などと言ってしまったことに、今さら後ろめたさを感じてしまっているようだ。
要は、恥ずかしいのである。
『出来たよぉ~、食べるぅ~?』
そんな彼女の言葉に、僕はキッチンのテーブルへと腰を降ろした。テーブルには朝食が並び、彼女の手で熱いコーヒーが置かれていく。
間近で見たその顔は肌色はとてもよく、イキイキとしている。セックスで満足を得られた女性と言うのは、朝だと言うのにこう輝いてしまうらしい。
エプロンを降ろし、対面へと座った彼女。僕のソースや醤油の心配もしてくれながら、自分も朝食に手をつけ始めるのです。
きっと、お互いに思っているのは昨夜のこと。残念だが信哉さんの一件などはもう頭にはなく、あるのは深夜に行われた営み。
あまりに充分をしてしまったため、まだその余韻が残ってしまっている。そのためか、黙々と食べ、お互いにどこか口数が少なくなっていたのです。
気にした僕は、『ねぇ?今日、どこか行かない?デートとか。』と口にしてみる。しかし、彼女からの良い返事は聞かれない。
『ちょっとだけ、お仕事したいし。』と、閉店ながらも家で何かをするようです。本当なら、もっと強引に誘ったのかも知れません。
しかし、『お仕事。』という言葉を聞いてしまっては、僕も引き下がるしかありませんでした。小さいながらもお店をやって、生計を立てているのですから。
『じゃあ、また来ます。また、誘うよぉ~?』と言い、長く居たこの家を出ました。『いろいろありがとうねぇ?』と感謝の言葉をくれる加代子さん。
しかし、その目からはどこか浮かない印象をうけるのでした。
僕を送り出し、彼女は家の中へと戻ります。いつものように洗濯機を回し、いつものように掃除機を手にします。
彼女にとって、いつもと変わらない穏やかな日曜日が訪れるのです。その脚で向かったのは奥の倉庫。と言っても、使わない部屋を物置にしただけのもの。
仕事で扱うものがダンボールで重ねられ、ここに保管をされているのです。その隣にあった台帳を手に取り、品数のチェックに入ります。
しかし、チェックが行われたのは、たったダンボール1箱分。生真面目な彼女です。その程度のことなど、ちゃんと済ませていたのです。
沸き上がってくるのは後悔の念。デートに誘われた時、どうして、『一緒に行きます。』と言えなかったのかと今さら後悔をしてしまっています。
そして、この家に訪れた静けさは、彼女をまた一人にさせてしまいました。たまらなく切なさを覚えてしまうのです。
洗濯機の回る脱衣場。シャワーを浴びようと裸になり、風呂場の床に足を降ろします。その床はびしょびしょに濡れていました。
ほんの数時間、汚れた身体を洗い流したばかり。あの時、ここにはもう一人誰かが居たはずなのです。
コックが捻られ、シャワーが流れ出します。加代子さんの肩からそれは流され、擦る手が身体を潤していきます。
腕が、そして首が手によって洗われていく中、胸元に垂れたがった大きな乳房を彼女の手は持ち上げていました。
裏までしっかりと洗われていたはず乳房でしたが、その手が急に止まってしまいます。左手が強く搾り上げ始めたのです。
それはどこかお餅のように扱い、輪を作った指の間からは真っ黒な乳首が押し出されて来ます。
『ハァ~…、』
その時、加代子さんは自分の吐息に気づき、焦りました。本人知らないままに、身体を虐めようとしていたのです。
慌てた手は乳房を離し、流れ落ちるシャワーを見ながら、立ち尽くします。『何をしてたのか?』と自分を戒めるのです。
再びシャワーが彼女の身体を潤し始めました。しかし、その水量は上げられ、真っ黒な陰毛が下から弾け飛びます。
シャワーは更に寄せられ、ただその一点へとお湯を掛け続けるのです。
そして、朝のお風呂に響く、加代子さんの微かな声…。
『アッ…、アッ…、アッ…、アァ~…、』
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