加代子さんの目は、使用をされたコンドームを拾いあげている僕を見ていました。しかし、彼女の心はここにはありません。
目の奥から熱いものが込み上げてくるのは、全てを裏切られた気持ちからでした。そして、浮かんでくるのはあの男の姿。従弟の信哉の嘲笑う顔でした…。
それは『6時30分くらいにまた会いに来ます。』とメモに書かれた、あの日のことです。
その日、信哉は時間ピッタリに彼女の店を訪れていました。出迎えた彼女でしたが、前の経験から営業時間を過ぎてもお店を閉めることはありません。
リビングに迎え入れ、おそらく1時間程度になるであろう彼の話に、加代子さんは付き合う覚悟を決めます。
することになるのは、きっと恋愛と性の話。内容が内容だけに、彼女にもそれなりの強い気持ちが必要だったのです。
その日の信哉の目は輝いていました。真面目に授業を受ける生徒のような目をしていて、答える彼女にも少しばかり熱が入ります。
しかし、生理について聞かれ、女性器について聞かれ、最後には男性器の話にまで及んでいきます。
恋愛相談には程遠いのですが、彼の遠回しな質問の仕方は巧みで、最低限ながらも彼女なりには答えてしまっていたのです。
そんな時、ある人物が訪れます。近所のおばさんでした。お店が開いていたため、遅い買い物に来てしまったのです。
正直、加代子さんは『しめたっ!』と思ったはずです。そのおばさんは話が長く、30分や1時間はへっちゃらなのですから。
『これで時間を稼ぐことが出来る。終わることには、彼の帰る時間…。』、そんな思いで加代子さんは応対をしていました。
しかし、彼女の考えは甘かったようです。『真面目な生徒。彼はもう変わった。』、そんなものは全て偽りだったのです。
加代子さんがお店に向かった後、しばらくはソファーに座っていた信哉。しかし、話が長くなると考えた彼は行動を起こし始めます。
洗濯機へと走り、開いたそこにはお昼休みに脱いだであろう加代子のシャツが一枚入っていました。下着がなかったことは、残念だったに違いありません。
しかし、そのシャツはソファーに寝転がった信哉の手で犯されることになります。ポケットに収められていたコンドームも取り出されました。
それは信哉のモノを包み込み、彼の手が包んだものをシゴき始めるのです。
『加代…、加代子…、しゃぶれ!俺のチンポ、しゃぶれ!』
うわ言のようにそう言いながら、彼は自らの手で快楽へと溺れていくのです。頭に浮かぶのは、もちろん加代子さんの顔。
ついさっきまで自分の質問に答え、男性器の話になると困っていたあの顔。あの顔の女性にチンポをしゃぶられます。
それは、かなりの時間でした。信哉にとっては、オナニーをしている姿を、加代子に見られてもいいとさえ思っていたのです。
しかし、加代子さんの話は思いの外長く続いてしまい、先に彼の射精が終わってしまいました。
抜き取ったコンドームの口は縛られ、彼はその置き場を考えます。そして置かれたのが、あの絨毯の下。
もちろん、加代子さんが一番に見つけることを分かっての行動でした。それは、信哉の歪んだ愛情の表現だったのです。
全てを理解した加代子は、僕にその理由を語り始めます。『嘘はダメ。本当のことを伝えたい…。』、そう強く心に誓いながら…。
『…ってっ…、ねぇ…、』
彼女は慌てます。心では分かっていても、まるで言葉が出ない。そう、自分が号泣をしてしまっていることに、今さら気がついたのです。
涙でかすむ目から見えるのは、自分を疑いの眼差しで見詰める男。さっきまでこの男に抱かれて眠っていたのに、その目からは愛など感じない。
そして、信哉…。あの真剣な眼差しの彼に対して、自分の子供のように教えていた自分が情けなくなる。裏切られたのだ。
加代子さんは硬いフローリングだたの床だと言うのに、強く膝を着いていた。
両手を床に着け、『どうしてよぉ~!…、なんでよぉ~!…、』と泣き崩れてしまう。
そして、上がった顔は醜いほどに涙が溢れていて、あの美人の顔が台無しとなっていた。しかし、その潤んだ目だけは、しっかりと僕に向けられている。
そして、溢れ落ちる涙を拭こうともせず、彼女はこう言うのです。
『ナオミチちゃん…、お願い…、もう助けてください~…、もうツラいのはイヤです…、あの人から、守ってください…、』
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