僕はベッドにもたれ掛かって座っていた。眠る彼女を見ながら、激しかったセックスの余韻に浸っているのだ。
加代子さんは、僕の左の太股を抱き締めて眠っている。顔から30センチ横には、むき出しとなった僕のモノがあるというのにもう気にならないようだ。
そんな彼女の髪を撫でてみる。いつもはちゃんと整えられているその髪も、さすがに少し乱れてしまっている。僅かですが、その中に白いものも見えていました。そんな年齢の方なのです。
彼女からは、寝息が聞こえていました。覗き込めば、とても安らかな顔をしています。セックスで満足の得られた女性というのは、こんな顔になるのでしょう。
30分くらいが経った頃。着ていた布団が動き、加代子さんの目が開きます。寝起きの目は赤く、顔からは疲れも見えます。
自分の体勢に気づいた彼女は、『ごめんなさい。寝ちゃってたわぁ~。』と言い、身体を起こします。しかし、その目は僕の股間に向けられていました。
『加代子さぁ~、ソレ握って、幸せそうに寝てたよ~?』とからかうと、『えぇ…?…、』と困った顔を見せています。
『顔、押し付けて来たもん!』と言いますが、さすがにこれで嘘なのがバレてしまうのでした。
お互いの体液の匂う部屋を一回出ます。彼女の手を引きながら、向かったのはお風呂場。乾いたと言っても、身体からはその匂いがしていたはずです。
コックを捻り、流れ出したシャワーでお互いの身体を洗うのです。全裸の加代子さんが目の前にいますが、さすがに股間は反応を見せません。
僕も疲れているのです。
脱衣場に戻ると、彼女の手に持たれたバスタオルが僕の身体を拭いていきます。背中からお尻、胸から股間、気にすることもなく強く拭いて来ました。
僕の身体でもあり、もう彼女の身体でもあるのです。『先に出て。』と言われ、僕は素直にリビングへと向かいます。彼女のその姿は、母親そのものでした。
数時間前にエアコンが切れたため、少し肌寒いリビング。そこへ、パジャマ姿の彼女が現れます。
『ちょっと寒いねぇ~?』と言い、エアコンがつけられ、熱い飲み物の準備をしてくれてます。僕は立ち上がり、リビングの中を歩きます。
壁に飾られた川田くんの賞状、隅に奉られている神棚、そして数冊の本が並んだ本棚。それはいつもと変わらない、何度も見た景色です。
『寒いから、これ飲んで?』
加代子さんの手には、カップが握られていました。香りから、それが紅茶だとわかります。切ったレモンも添えられています。
『先に飲んで?』と手渡され、僕はソファーへと戻ります。その時、敷かれた絨毯で何かを踏んでしまったことに気がつきます。
しかし、下を見ますがそこには何もありません。『あれ?』と思い踏み返すと、それは絨毯の下にあるようです。
カップをテーブルに置き、気になった僕は絨毯を少しだけめくります。そこにゴミがあるならば、それは掃除のし忘れ、彼女のミスとなるからです。
『えっ?…、』
そこにゴミはありました。加代子さんの掃除のし忘れでした。本当は見つからないように処分をするのが、彼女のためです。
しかし、僕の手はそれを拾い上げ、怖いながらも彼女が振り向くのを待っていたのかも知れません。
『なによ、これぇ~?…、どう言うことよ…?…、』
ぼくの言葉に加代子さんは固まっていた。それを見せられたことで、言葉を失っていたのです。
明らかにそれは絨毯の下から取り出されており、手に持つ僕に問い詰められてしまい、駆け巡る加代子さんの頭はもう処理が出来なかったようです。
それは、先が固く縛られた男性用の避妊具だった。中はまだヌルヌルとしていて、とても数年前のものではない。つまり、誰かがここ数日の間に、この場所で使ったモノとしか、僕には考えられないのです。
『なによ、これ…。何でこんなものがここにあるんよ…説明してよ…。誰が使ったんよ…、それで…、お前が…、相手したんかよ…、』
問い詰める僕の声は震えていました。
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