残暑で、まだまだ暑い日があるものの
秋の気配が感じられるようになってきていた。
カズマは、カフェの店内で
ショウコさんの到着を待っている。
前回会ってから、二人の都合がなかなか合わず、
一ヶ月以上経過していた。
その間、特に連絡を取り合うことはなく、
ショウコさんが、どのように過ごしてきたか
分からない。今日、それを聞くのも
楽しみの一つでもあった。
前回とは違う駅、違う店を指定した。少し駅から離れているし、駅自体も遠くなっている。遅くなることも想定される。待ち合わせは12時、昼休みが近づくにつれ店内に人が増えてきている。前回とは違い現代的なお洒落な広いカフェに、賑わいが訪れようとしている。コーヒー一杯しか頼んでいないカズマは、申し訳なく思いながらも、暇を潰すためにスマホに目を落とし、ゲームをし始めた。前回のように分かりやすい席が空いていなかったため、入り口から見える席に適当に座ったが、もう顔はわかっているし、ある程度席の場所は伝えたので大丈夫だろう。
ゲームに熱中していると、不意に声をかけられる。
「こんにちは。すみません、遅くなりました。」
顔をあげると、ショウコさんが立っている。
「あ、、、こんにちは、、、」
ゲームに熱中しすぎて、どもってしまう。
相変わらずの美しい女性、ふわっとした花柄のワンピースは秋を感じさせる色合いで腰のベルトはリボンに結ばれている。膝丈のスカートから見える足にはストッキングが履かれ、ベージュのパンプスがシックだ。
ここにも季節の移ろいが感じられる。
服の影響だろうか、それとも一度会っているからか、前回ほど冷たい雰囲気は感じられない。
まあ、美人には違いないが。
「あ、どうぞ、、、」
一度会っているにも関わらず、いや、前回のことがあるからかもしれないが、お互いぎこちない。
おそらく、お互いに今日を楽しみにしていたはずなのに。前回の行為が頭をよぎっているのかもしれない。
「場所はすぐわかりましたか?ちょっと遠くなってしまってすみません。」
「いえ、大丈夫です。遅くなってしまって。。。」
時計を見ると12時を少し回ったところだ。
「ほぼ、時間通りじゃないですか。とりあえずごはん食べましょう。」
広い店内は、ほぼ満席になっていた。
隣との間隔もそんなにあいていない。
二人とも同じランチを頼んだが、ここから気まずい時間が流れた。人が両隣にいる状況で、突っ込んだ話は出来ない。接点のない二人にとって厳しい時間だった。
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