音に反応し再び入り口の方を見ると一人の女性が入ってくる。しかも美女だ。ウェーブのかかったショートボブの髪、均整のとれた顔からは人を寄せ付けないような冷たさを感じさせるが美しい。背は高く、胸も大きい。タイトなワンピースがスタイルのよさを際立たせ太めの白のベルトが印象的だ。見とれていると目が合ってしまった。とっさに目を反らす。背は高いけどさすがにあの人は違う。おそらく20代だろうし。しかも、店内の数少ない男性客がすべてに女性も視線を送っている。それくらい誰もが美しいと感じるレベル。カズマは携帯をいじりだす。コツコツとヒールの音が近付いてくる。
え?まさか?いや、さすがに違うでしょ、、、
気をとられないように、スマホに集中しようとしたその時、足音が止まり声をかけられる。
「あ、あの、、、カズマさんですか?」
心臓の鼓動が早くなる。顔をあげるとあの美女がそばにいる。
まじで?ほんとに?うそでしょ?
「あ、はい。」
緊張して、何も言えない。
「よかった。私、ショウコです。はじめまして。」
「え、、、あ、、、、あ、カズマです。はじめまして。」
言葉がうまく出て来ない。全く想定していなかったことが起こっている。いろんな事が想像され、頭がこんがらがっている。
え?ほんとに?こんなことある?どういうこと?
「あ、、、すいません。とりあえず、座ってください。」
なんとか平常心を取り戻そうと必死になる。こうなってくると周りの視線が痛い。
こんなの聞いてないよw
ショウコさんは席に座って一呼吸おくと口を開く。
「私、こういうの初めてだったので、どういう方が待ってるんだろう?ってドキドキしてたんですけど、よかったです。素敵な方で。ていうか、おモテになるんじゃないですか?」
「いやいや、褒めても何も出て来ないですよw全くと言っていいほどモテないですwていうか、驚いたのはこっちです。ほんとにショウコさんなんですか?」
カズマ自身イケメンだとかいい男だとか女性からよく言われるが、だからといってモテたことなど一度もないので、サラッとかわす。女性の言うこういう言葉はどこまでがほんとの事かよくわからない。
「え~!そうなんですか?普通にかっこいいですけど。もちろん、連絡したショウコですよ。何かおかしいですか?」
「ありがとうございます。あ、いや、35歳と聞いていたので。入り口入ってきた時に、20代と思ったのでこの人は違うと思いました。それに、美人過ぎるので。え?どうして?って感じです。」
「www私も褒めても何も出て来ないですよ(笑)でも、嬉しいです。ありがとうございます。一応美意識は高く持ってるつもりなので。お互い褒めあって可笑しいですね(笑)」
「いやいや、入ってきたら男性はもちろん、女性も見てたじゃないですか。びっくりしますよ。」
「そうですか?あまり気にしないようにしてるので、その辺はわからないですけど。」
「そうですか(笑)まあ、とりあえず、何か注文しましょう。なに食べますか?」
とまあ、こんな感じでとりあえず、楽しく会話をしてランチを食べた。人もいる場所なので今日会った目的の事については一切触れなかった。今年の夏は暑いだの今やっているドラマの話やら雑談を楽しんだ。それなりに打ち解けたのではないかと思う。食べ終わるとカズマが先にお互いにトイレにいった。ショウコさんが戻ってきて、確認する。
「今日、これからどうしますか?というか、何時くらいまで空いてるんですか?」
「うーん、、、一応18時くらいの電車に乗れば大丈夫なんですが、、、」
「そうですか。では、一旦ここは出ましょう。」
会計票をもって席を立つカズマ。こういう時は悩ませる間を与えず行動した方が良いと判断する。ショウコさんは帰り支度をし席を整えあわててついてくる。自分の分は払いますというが、ここまで来ていただいたんですし大丈夫ですよ、といい支払いを済ませ外に出る。外は強い日差しで今日も暑い。今年の夏はほんとにどうなっているのか。ちょうど、誰も人がいなかったのでストレートに聞いた。
「どうしますか?ホテル行きますか?」
ショウコさんは無言だ。
「もし、あれでしたら、今日はここまででも。それか、そういうのなしでどっか行きます?」
、、、、、、
少しの間があき、口が開く。
「、、、行きます、、、」
返事を聞くとカズマはゆっくりと歩きだす。ジリジリと日差しが痛い。汗が吹き出してくる。ショウコさんは日傘をさし、コツコツと後をついてくる。カズマは少し待ち、鞄を肩にかけた方の手で日傘を持っていたため空いている手の側に並ぶ。
そっと手を繋ぐ。
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