『明日は先代の一周忌かぁ』
午後の休憩時間。
ある工員がタバコを燻らせながら何気なく呟いた。
少し間を空けて亜希子が返す。
「ええ、早いものね。あれから1年も経つなんて...」
『俺はいまだに信じられねぇよ』
『今でも先代が隣で機械を回してるような気がしてならねぇよなぁ』
工員達は口々に先代との思い出を語った。
「...みなさん、明日は朝から申し訳ないけど、法事のことよろしくお願いしますね」
亜希子はどこか晴れない様子で、喫煙所に集まっていた工員達にそう言った。
『それじゃあ...少し早いけど明日の準備もあるから先にあがるわね。三好さん、最後の戸締りよろしくね』
三好もまた前社長の頃から長年勤める工員の一人。
職人気質で無口な性格の彼は、何も言わず背を向けたままタバコを持った右手をふらりと挙げて応えた。
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